33話・ラシオス対ローガン 3
カラン、と乾いた音が闘技場に響く。
手元を打たれ、ラシオスが木剣を取り落としてしまったのだ。ガントレットに守られていても打撃は効く。一瞬痛みに表情を歪めるが、ラシオスはすぐに木剣を拾って構え直した。
「もう限界か?ラシオス殿」
「まさか。これからですよローガン殿」
ローガンの挑発に、ラシオスは鼻で笑って応えた。
優勢とはいえ、決闘が始まってから激しく打ち込み続けているローガンにも疲労の色が見えている。相手が武器を拾って体勢を立て直すのを待つ振りをしながら足を止め、自身も呼吸を整える。
その時、とある貴賓席に潜り込んだ侍女が行動を開始した。王子たちに注目している貴族は、同じブース内であっても使用人には注意すら払っていない。侍女はドレスの下に隠し持っていた小型のクロスボウを取り出した。
狙いを赤髪の王子に定め、
「そこまでだ」
突然、侍女の背後から手が伸びてクロスボウを掴み、先端を上に向けた。驚いた侍女が振り向くと、そこには凛々しい騎士が立っていた。至近距離でにこりと微笑みかけられ、侍女は思わず頬を染める。
「貴女に武器など似合わない。渡してくれるね?」
「は、はい……」
低い声で囁くと、侍女はすんなりクロスボウを手放した。そのまま肩を抱き、貴賓席から通路へと連れ出す。
「さすがハルク殿。見事な手際で」
「からかわないでくださいカイン殿」
侍女と押収したクロスボウを警備兵に引き渡し、騎士と聖騎士は肩をすくめて笑い合った。
第二試合の最中、演武をしながら貴賓席を観察していた二人は大公妃メラリアだけが護衛を同伴していないことに気付き、密かに警戒し続けていたのだ。
「残りの凶器も発見されたようですね」
「くっ……」
先ほどの場所はメラリアの貴賓席の真向かいに位置する。一度目と二度目の襲撃に使った場所もここから見える位置にあった。
「大叔母様、観念なさいませ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます