第2話
おいらは土下座をしていた。おいらの母ウルと父イデアに向かって。両親が苦笑いをしながらおいらを見る。
「一年、いや、半年間この家に置いてください。」
「俺たちも置いてやりたいんだけどさ、この国の法律なんだよ。ごめんな。」
申し訳なさそうに謝る父イデア。おいらの邪魔をするならこの国の法律くらい改正させてやる!おいらはダラダラしたいんだ!
「半年分過ごせるだけのお金、おいらに分けてください。貧相な暮らしができる程度で良いのです。」
おいらは、さらに土下寝をする。おいらに出来る最大限だ。困り果てた父イデアがおいらに財布を渡す。
「本来ならこんな形で渡すつもりは、無かったんだけどなぁ。」
財布の中には六〇金貨が入っていた。お父さんありがとう。一生ついていきます。おいらを養ってくだせぇ。
「家を出る時に、親から子どもに祝い金を渡すんだよ。大事に使えよ。」
おいら、ちゃんとこのお金返せるようになって会いにくるよ。お母さん。お父さん。今までありがとう。おいら立派な大人になるんだ。レッツゴー不労所得!
おいらは家を出て、宿屋の安い店を探す。どこも銀貨2枚だなんて高すぎる!おいらのお金を奪おうとするな。野宿でも、良いんじゃないか?無料になるし。
おいらは街をぶらぶらしていると身なりの良いおじさんを見つける。確か、あいつはこの街一番のお金持ちだ!昼間っから遊び歩いてるなんて、きっと立派な大人に違いない。おいらはおっさんの後をつける。
しばらく歩くとおっさんが振り向いて、おいらを見る。おいらの完璧な尾行を見抜くなんて、おっさんやるな!
「おいそこの小僧。わしに何かようか?」
「………。」
「暗殺者の類では無さそうだし、物乞いって感じもしない。それなら仕事絡みか?いや、小僧に仕事を依頼したことなどない。小僧は、何故わしを付けていた?」
おっさん早口!こうなんで頭のいい人たちは、早口が多いのだろうか?もっとゆっくり喋ってよ!!ほとんど聞き取れないじゃないか!
「おいら、働きたくない。働かなくても金を稼ぐ方法を見つける為、おっさんをつけてた。おっさん金持ちっぽいから、後を付けたらヒントを見つけられる気がして……。」
「ハハハッ、面白い小僧じゃの。働きたくないから働かなくても金を稼ぐ方法が知りたいとな。あるぞ!そんな夢のような仕事が、この世界には沢山ある。」
おいらは、おっさんの話に心が躍る。あったのだ。働かなくても稼げる方法が!おいらの夢の一歩が!
「小僧、人間は、三つに分けられる。なんだと思う?」
三つ?おいらそんな事聞いた事ないぞ。
「おとこ・おんな・おねぇ?」
「そうきたか、ハハハ。違うぞ小僧。労働者・事業主・資本家だ!」
おいらそんな言葉聞いた事ないぞ。
「労働者・事業主・資本家って何?」
「労働者ってのは、雇われてる人だ。会社に雇われてる人を労働者って言う。会社から給料を貰って生活する人のことだ!
事業主!事業主とは、雇っている人だ。会社の責任者だ。会社から給料を貰うことはなく。会社の利益から給料が貰えるのだ!!自分の成績によって、貰える給料が違う。
資本家。会社ににお金を出して、最高権力を持つ。お金を出した範囲ですべての責任を負うが最終的に残ったお金を分けてもらえる人だ!
お金を出せばその会社の利益によってお金が増えるのだ。」
「利益を出さなければ?」
「もちろんお金は無くなる。」
「ーーーヒィ!!」
苦労して集めたお金でギャンブルなんて、正気の沙汰じゃない。狂ってやがる。
「おいら、そんなに金持ってない。金貨60枚で足りる?」
「ハハハッ!そんなちょっとしか無いお金で稼げるわけない。まずは事業主を目指してお金を貯めろ!
しかし、それじゃつまらんのぉ。一年以内に、儲かる案のプレゼンが出来れば、わしがお金を出してやろう。」
「ほんとうですか?」
「もちろんだ。」
それからおっさんの白熱した話を聞いて、おいらの熱が強まった。こんな夢のような話があるんだ。
そんなことを話している間に辺りは暗くなり夜になる。恥を忍んで”泊まる宿が無い”と言ったところ1日だけ止めてもらえる事になった。
おいらは、部屋を案内されてお風呂に入るよう指示された。
「おっきな、おふろだぁ。」
おいら住んでいた家なんかよりもっと大きなお風呂。おいらもいつかこんな家を持ってやる!
おっさんの名前はカネダと言うらしい。名前に金が入ってるなんて、流石はカネダさんだ!おいらはお風呂を出て、布団にはいる。
「ふかふかっ。あったかい。」
おいらは瞳を閉じる。目を瞑るとカネダさんが言った言葉が、頭の中で何度もリピートする。
「貧乏人は労働で稼ぐ。金持ちは金で稼ぐ」
おいら、これから頑張る。
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