◆◆



「で、あなたの名前は?」


屋上から階段まで戻り、階段の五段目に座りながら僕は彼女に問う、赤い目、白い肌、白い髪、アルビノであろう彼女の名前を。


「私は北東キト、キトでいいよ」と、彼女は微笑んで言った。


「ではなぜ貴方はここにいるのですか?」

「それより貴方の名前も言うのが礼儀じゃない?」


ノータイムで言い返してきた。しかし彼女の言っている事は正しく、反論もできず僕は舌打ちをした後答えた。


「蒼…南 蒼です」


「ぷぶっ!!」


僕は彼女を望まない形で笑わすことに成功した。


「ぶっ、蒼って、女の子の名前じゃない?」


「その考えは古いと思います、今の社会は男女差別に否定的ですから」


「あは」彼女はその返答にまた笑ってしまう。


彼女と一緒にいると気が落ち着かない。僕は彼女がなぜここにいるか再確認するのを諦め、家に帰ろうと支度をする。


「もう帰るの?」


彼女は僕の服を軽く摘んで、スマホを押しつける。


「それなら、LIND交換して、まだ君の話、聞いてないよ」


「もう会う事もない、学校に行く気もない」

彼女は類を膨らませる。


「けちーへたれー」


「はあ」


駄々っ子のようにLIND交換をせがる彼女に折れて、僕はスマホを取り出す。


「やった」

彼女は喜んでスマホを振る、なぜ振る?

彼女がきょとんとした顔で「そんなに女の子とLINDできるの嬉しかった?」と聞いてくる。


冗談はよせ、と言い残し、僕は自殺を諦め、屋上から去った。



少し楽しいな、と思ってしまった。

僕の顔は笑っていたのかもしれない。



◆◆



「で、あなたの名前は?」


彼は私に問う、赤い目、白い肌、白い髪、アルビノである私の名前を。

「私は北東キト、キトでいいよ」と、私は微笑んで言った。


「ではなぜ貴方はここにいるのですか?」


「それより貴方の名前も言うのが礼儀じゃない?」

ノータイムで言い返した。何サラッとこっちの情報だけ集めようとしてんだ、彼は苦虫を噛み潰したような顔をした後、舌打ちをしながらも渋々答えた。舌打ちって……


「蒼.…南 蒼です」



「ぷぶぷっ!!」


私は笑ってしまった、名前で笑うのは失礼だが、かっこいい顔に比べて名前が可愛く、笑いがおさまらなかった。


「ぷっ、蒼って、女の子の名前じゃない?」


「その考えは古いと思います、今の社会は男女差別に否定的ですから」私はその堅物な返答にまた笑ってしまう。



私は、この空間を楽しい、と思った。

しかししばらくして、彼が荷物を整理している事に気づいた。


「もう帰るの?」


私は蒼くんの服を軽く摘んで、スマホを押し付ける。


「それなら、LIND交換して、まだ君の話、聞いてないよ」



「もう会う事もない、学校に行く気もない」


彼のそっけない答えに私は類を膨らませる

「けちーへたれー」



「…はあ」


「やった」駄々っ子のようにLIND交換をせがる私に折れたのか、蒼くんはスマホを取り出してくれた。


途中で彼が笑っている事に気づいたので、「そんなに女の子とLNDできるの嬉しかった?」と聞いてみた。


冗談はよせ、と言い残し、彼は自殺を諦め、屋上から去った。


「…蒼くんかあ」






本当にちょろいと思うが、私は彼の事が気になるとようになった。



◆◆




僕はテーマパークに来ていた、キトが行きたいと言ってきたのだ、

一人で行ってこいと言うと、彼女は壊れた機械のように5分に一度、[ひたすら鬱アニメにセリフを叫ぶおじさん]のスタンプを送ってくるのだ、僕はLINDのうるさい音に耐えきれず、許可を出してしまった。


「おくれたー!!待った??」


「何をしたら2時間も遅れるんだよカス」


集合時間は9時半、今は11時半過ぎである。


「ごめんねっ?ゲームが忙しくってね?」


「死ね」


僕の返信にも彼女はふふっと笑う、そんなふうに笑われるとこちらまで気が緩んでしまう。

キトは自分の着てきたワンピースを見せつけるかのように一回転し、上目遣いであざとく僕を見た。


「似合ってるかな?」


誰もが惚れるようなあざとい顔をこちらに向けてくるキトに、僕は真剣な顔をして答える。



「鏡見ろよ、ブス」


「死ね、もっと可愛いよ!とかさあ、あるじゃん…」


「いやこちとら2時間待たされてんだよ、文句言いたくなるに決まってんだろ」


「丁度いい感じにお昼になったね~スケジュールかんペーき!」


「死ね、てかなんで今日なんだよ、急すぎだろ、俺たち知り合って2日目なんだぞ?」


僕は疑問に思っていた事を言った、確かに今日は日曜日で、彼女は明日学校だ。



…僕は不登校だけど……


その返事が来るとわかっていたと言わんばかりのドヤ顔で言った。


「なんと!!今日まで料理、お土産にかかるお金が10%オフなのです!!!」


「おもんな、帰ろ」



「ちみ、お金大切にしないとダメだよ」


そうやって彼女と軽口を吐きあいながら、テーマパークを楽しんだ。



よく事故が起こるジェットコースターに乗り、お化け屋敷にも入った、昼ごはんはテーマパーク内のレストランで済ませた。

たいして美味しくない料理が美味しく感じるのは、楽しいからなのだろうか。

2人ともくたくたになるまで笑い、遊び、気づけばテーマパークが終わる時間となっていた。


もう日は沈んでおり、あたりは真っ暗になっている。もう夜中の10時である、遊びすぎて時間を忘れていた。


「楽しかったね~」


「不服だけどな」


楽しかった、久しぶりに小学生のように何も考えず、自由を堪能した。


キトの方をちらりと見ると遠くを眺めていた。余韻に漫っているのだろうか?

急に二歩前に出たかと思うと、くるっと振り返り両手を広げる、キトは強く、でも優しい口調で、


「幸せってなんなんだろうね?」と僕に言った。


僕は質問の意味がわからなかった。だから

「楽しいが幸せなんじゃないか?」


と、曖昧な返信をしてしまった。疑間を疑問で返してしまった。

するとカナははにかみながら小さな口調でそっか…っと咳いた後に僕に手を振って、「私、家反対だから、また明日ね!」


「うん」


「…じゃあね」


僕は息を呑んだ。キトの弱々しい返事に不安がよぎった

まるで遠くへ行ってしまう前の最後の言葉に聞こえた。


キトにもう会えない気がした、でも気がしただけで、気のせいで明日も会えるかもしれない、でももし今日でお別れだったら?いや、気のせいだ、そんな心配したところでキトに笑われるだけだろう。


また明日も彼女は授業中にLINDを送ってくるのだ。

僕は目を閉じた後、空を見上げた。真っ暗なのに空は光り輝いて見えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

たとえそれが依存だとしても。 はいんじん @wtpmjgda7878

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ