たとえそれが依存だとしても。
はいんじん
上
町から灯りが消える。
もう明日になっている。
2月の冷たい風に当たる照明は薄く青がかった冷たい色をしている。
夜とはどこまでも深く、先が見えない。しかし、ふと寝静まった町を見ると少し顔が明るくなる、夜中なのに外にいるという背徳感からか、今日という日に満足したからなのかはわからないが悪い気はしない。
「ねえ」
彼女は僕に声をかける
「幸せってなんなんだろうね?」
彼女は自虐的な笑みを浮かべながら笑う。
今にも泣いてしまいそうな、脆さを感じる目で僕を見る。
「僕は今幸せだよ」
そんな彼女に僕は優しく声をかける。
怯えを、震えを、体が冷たくなっていのを無視しながら続けて言う。
「好きです、僕と付き合ってください」
それは、空気の読めない、全くシュチュエーションに合わないベタなセリフで、しかし、今しか言えなくて。
彼女は涙目ではにかみながら、縦に領いた。
◆◆
「ねえ、話聞いてる?」
髪型がロングの眼鏡をかけた女性、
ーー僕の同級生、沙羅がきつい口調で言う。
「なんであの子を振ったのって聞いてんの!」
僕は確かに亜衣を振った、よく話すし、趣味も合う、親友とも言える仲の良さだった。
ある日、亜衣に告白された。でも僕には恋愛がわからなかった。だから振った。
僕はなんと言えばいいかわからなかった、だからとりあえず謝った。
「……ごめん」
どうして僕が関係のない同級生にまで謝らないといけないのか、僕はただ、友達として、親友として亜衣と接していたのに
「まじ、付き合う気ないなら優しくすんなよ、亜衣の気持ち考えたの!?」
知らないよ、じゃあどうしたらよかったんだよ。
羅が校舎裏から出て行った、最後まで、最後までゴミを見るような、人を見る目ではない
軽蔑した目で僕を見ていた。
「…僕がおかしいのかな」
僕の声は、呟きは、拡散して空に消えた。
そして僕は、学校を休んだ、学校に行かなくなった。
◆◆
放課後、学校の屋上、あまり都会ではなく、人通りは少ないし、遠くには山しか見えない。
僕は屋上から地面を見下ろす。
僕は死ぬつもりだ、自殺するのだ。
僕の姿を見るたびにクラスメイトは暴言を吐かれた。僕が亜衣を振った事により、人気者の立ち位置を失った、仲良くしてくれた友達はみんな手をひっくり返した。僕は孤立した。
人間不信になった。生きる気力を失った。
これは運命への抵抗だ。
最後に自殺して、みんなの目に自分を焼き付けてやろうと思った。
ただの逃げだ。現実逃避だ。わかってる、でも逃げたかった、生きる理由がなかった。
僕は重力に身を任せようと、屋上の淵に立った。目を閉じて深呼吸をする。最後の勇気が僕の背中を押してくれるだろう。
しかし、僕が地面にたたきつけられる事はなかった。後ろから誰かが僕を抱きしめた。
少し抗えばすぐに離す事ができる力のない肌、色白く細い腕
白い髪をしたアルビノの少女が後ろから僕の体を支えていた。
童顔の可愛い女の子だった、髪は肩まであり、少しおとなしげな雰囲気を感じた。
僕が抵抗することはなかった。死ぬ勇気は拡散して霧となり消えた。勇気はもう背中を押さないだろう。
「はじめましてかな?」
彼女は笑顔で僕に問いかける。
僕はしけた面をしながら返事をする。
「誰ですか?あと放課後に屋上になんでいるんですか?」
彼女はニヒルに笑い、宙に親指を立てて言った。
「君と同じ事をしようと思っていたんだよ」
彼女の深紅の目に映る僕は、目を少し見開い
ていた。
◆◆
私は死のうと思った。
理由はいじめ、その原因は髪と目。
私はアルビノだと母親が言った。目は赤く、髪の毛は透き通るように白い。
人々は私を歪と言い、物を隠し、水をかけ、迫害し続けた。
多分、容姿が羨ましいって事もあったのかも知れないけど、私はいじめられた。
でも、そんな私の事をを思ってくれる友達がいた。
私の話を笑顔で聞いてくれた。彼女がいれば、他はどうでもいいと思えた。
でも彼女も裏で私の悪口を言っていた。聞こえた。心が折れた音がした。
私は取り憑かれたようにおぼつかない足をあげて、階段を登った、
死のうと思った。
でも私の足は止まった。
屋上には、同級生の男の子が立っていた。その真っ黒な目は色が全く違っても私と近しいトーンをしていた。もう何にも期待しないような目だった。
ーーこの人には何が残っているのだろうか?
少しだけ、話してみたいと思った。
私は彼が落ちないように、体を支えた。
「はじめましてかな」
私は彼にそう言った。彼は一瞬驚いて、でもすぐにそっけない顔に戻った。
「誰ですか?放課後に屋上になんでいるんですか?
あなたもおんなじでしょう、と言いかけた後、私はニヒルに笑い、入差し指を空に向けて言った。
「君と同じことをしようとしてたんだよ」
その言葉を聞いた彼が目を少し見開いて私を見た時、不意に可愛いなと思った。
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