第16話「嵐の前のヘルデニカ」(4)
今日も更新間に合わなかったってマ???
申し訳ございません<(_ _)>
今日二回更新しますのでお許しください。
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ーーーカブラ視点ーーー
ギルド本部。
受付カウンターに縋り付くようにしながら、鼻歌混じりに書類を書くアリア。
その脇で、記入内容に不備がないか確認する。
……大丈夫そうだ。
「じゃん!冒険者バッジ〜!」
アリアは早速出来上がったバッジを見せびらかしてくる。
眩しい位の笑顔だ。
まぁ、わざわざこのためだけに、国を抜け出してきたワケだからな。
そりゃ嬉しいか。
「良かったな 」
「うぇへへ〜」
アリアは鉄色のバッジを胸に着けると、その場でぐるぐると回り出した。
「おめでとうございます 」
ふと、優しげな男性の声。
「あ!エルさんだ!」
声の主を見て、アリアはパッと顔を明るくすると、たたたっと駆け寄って行った。
「見て〜!冒険者バッジ!」
「ふふ……よくお似合いですよ 」
「えっへへ〜」
長身痩せ方の男性は、少し屈んでアリアの頭を優しく撫でる。
爽やかな若草色の髪に、優しげな眼差し。
サラサラの髪の脇から、尖った長い耳が覗いている。
纏っているのは、白を貴重とした聖衣。
背後には、耳も目尻もとんがった女剣士が控えている。
どちらも
「エルさん……」
「こんにちは、カブラくん。ガルくんもこんにちは 」
「……うっす 」
彼は、"聖王"エル=リィア。
世界一の治癒師に受け継がれる、"聖王"の称号を持つ
"剣神"率いる七人の天才、《
ニコニコ上機嫌だったアリアが、はっとして俺の後ろに隠れる。
「ま、まだ帰んないから!エルさんが言ってもダメだから!」
「大丈夫ですよ。連れて帰ったりはしません 」
「ホント?」
「本当です 」
アリアはホッとしたようで、俺の足元からのこのこ出てきた。
「じゃあ、なんでエルさんがここにいるの?」
「旅に着いてってくれ、と頼まれたんですよ。君のお父さんにね 」
「え!!? 」
本部中に響くようなデカい声で驚くアリア。
「エルさんも一緒に旅するの!?」
「そうですよ 」
「やったー!!」
アリアは飛び跳ねて喜ぶ。
ガルは口元をむぐ……と歪めた。
エルさんはそんな二人を優しげに眺めたあと、俺に向き直り、頭を下げた。
「カブラくん……今まで二人の護衛に従事して頂き、ありがとうございました。君が咄嗟に動いてくれなかったら、今頃どうなっていたか……」
「や、やめて下さいよ。エルさんに頭下げられると、どうも……」
俺は慌てて、エルさんを抱き起こした。
心なしか、後ろの女剣士の視線が強い。
「ここから先は、僕が代わりにサポートにつきます。カブラくん……お疲れ様 」
「あぁ……どうも 」
お疲れ様。
そう言われて、俺はふっと肩の力が抜けた。
緊張が解けていって、同時に、何か温かいものも流れ出ていく。
その感覚は……安堵感に近い気がした。
一ヶ月近く前、船にコソコソ乗り込むガキ二人を見つけたのが、事の始まりだった。
誰だか知らんが、無賃乗船は犯罪だ。さっさととっちめて追い出しちまおうと、俺は船に乗り込んで、そして、二人と対峙した。
アリアとガル。
その噂は知っていたけど、所詮ガキだ。
すぐ簀巻きにしてやれる。
……と思っていた。
二人は手強かった。
A級冒険者の俺に匹敵する、アジリティと戦闘センス。
二体一の対処など、最早朝飯前だというのに、二人のコンビネーションはそれ以上に巧みで、中々捕まえさせてくれなかった。
もつりにもつれ、俺は船の底まで二人を追い詰めたのだが、そこで船が出航。
俺は実質的に敗北し、二人のドヤ顔を食らった。
そこからは、危なっかしい二人の世話をする日々。
曲がりなりにも、コイツらは王子と王女みたいなもので、万が一があれば、俺の首ひとつでは済まされない。
胃袋に穴が開きそうだった。
神聖大陸に着いたあと、俺はギルドから本国に連絡を入れ、事情を説明。
迎えが来るそのときまで、護衛をすることになってしまった。
幸い、アリアたちは基本素直に俺の言うことを聞いてくれたが、ただ一点、ヘルデニカのギルド本部に行くことだけは譲らなかった。
ならばと、俺たちはヘルデニカまで直通の魔導列車に乗ろうとして、しかし、どういうわけか列車は運行していなかった。
何かトラブルがあったらしい。
しょうがないので、そっからは馬車旅だ。
一ヶ月近い旅路。
ガキのお守りをしながらの冒険は初めてだった。
今思えば、そんな悪い旅でもなかった気がする。
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