チョコとともに元気な笑顔
(こ、これは!)
(すまん、俺の
確かに本人が言っていたように、ブレンドされたチョコであるためか、今まで食べてきたどのチョコにもない味だったのはわかった。
これを今、目の前で俺を見てくれている日織が作ってくれたかと思うと、うれしくないわけがない。
「んまいっ」
左手でばっちぐぅをしたら、日織も同じく左手でばっちぐぅをしてきたと思ったら、そのまま俺の左手に衝突させてきた。変則グータッチである。
「マーブル生チョコも考えたけど、そっちの方がかわいいでしょ」
「えーあー、おぅ」
とりあえずうなずいておこう。ということしかできなかった。
そこまでずっと左手同士はぶつかったままだったが、日織が左手をよけたと思ったら、そのまますっと懐へ入り込んできて
「うぉちょっ」
とりあえずなんちゃらタルトは守らねば!
日織のタックルを受け止めながらも、左手へ渡し、そのままベッドの上へ置くことに成功。この連携プレイはぜひリプレイが欲しいところ。
「おっきーが付き合ってくれるー。うれしいなー」
腕が俺の背中に思いっきり回され、今までで最も首に近距離な位置で、そんなセリフをしゃべってくれた。あぁ顔までくっつけてきてやがるし。
「にしても、なんでこのタイミング?」
思わず聞いてみてしまった。
「おっきーがいつまで経っても言ってくれないからー」
「…………すまん?」
「許すー」
なんだかよくわからないうちに許してもらえた。
「すっごく大好きだったから、断られたらどうしようかと思った」
「そ、そんなにだったのか……」
いつもならうんと言ってくれるタイミングで、肩に乗っている顔と背中に回っている手に、少しだけ力が加えられたのがわかった。
「一緒にノリよく遊んでくれてっから、そこまで俺のこと想ってくれてたとは……」
「大好きだから、一緒に遊びたいんだよ」
「……正解」
さすが日織さんである。
「でも普段他の女子と一緒に帰ってることが多いよな?」
「大好きだから、嫌われたくないんだよ」
「……半分正解。日織のことを嫌いにならねぇよ」
でも部分点も確実に拾っていく日織さんさすが。ご褒美に、俺からも日織を抱き寄せることにしよう。
また背中の手の力が強まった気がする。きっと絞り袋の扱いも上手なんだろうな。
「うれしいー」
トーンはいつもと同じように聞こえた。でもきっといつもより、パワーアップしているんだろうな。
「……とにかくまぁその。よろしくお願い、します」
なぜか改めてよろしくお願いしますした俺。こんな状態なので正座ではないが。
「よろしくお願いします」
顔をいったん俺の前に持ってきてから、よろしくお願いします返しをしてきた日織。近すぎ。テレすぎ? かわいすぎ。
「……よ、よろしく」
短くした。
「よろしくっ」
「いでっ」
頭突きをくらわしてきた。洗面所のときはサイドアタックだったが、今回は真正面。つまりもう、おでことおでこがごっちんで。
気が付くと、目を閉じた日織がそこにいたので、俺も唇をごっちんさせにいった。
胸えらいこっちゃが炸裂しながらも、いつまで経っても日織は離れる気がなさそうなので、俺からゆっくり離れることにした。
一瞬視線が下を向いていたが、すぐににこっとしてくれた。ああ、なんかいいな、この瞬間。
「ココア持ってきたわよー」
ばっ!! 二人してドアの方を見る! いや見たところでそこにはいいノック音を響かせる茶色いドアしかない! てか結構茶色って身近のいろんなところにあるな!
「……Goっ!」
俺たちは近接戦闘を解除させると、俺は箱・ふた・封筒・文・包み紙をベッドの反対側、ドアから見て隠れるような位置へ置いた。
「わーやったぁ~!」
いつものトーンに聞こえるが、いつものトーンではないように聞こえる気もするし、やっぱりいつものようなトーンだと思わせる声を、日織は立ち上がりながらドアに向かって言っていた。
そのまま日織はドアを開けて、
「チョコレートのクッキーもあったから、持ってきたわ」
「やったぁ~!」
母さんが木のおぼんに、ココアが入っているであろう白いマグカップふたつ・小型の丸いおぼんはきっとチョコクッキーが入っているであろう、それらのアイテムが乗せられてあった。
俺の代わりに、日織がおぼんを受け取っていた。
「
「今度体育で体操のテストがあるから、練習いちにっさんしっ」
肩に手を当て、上と左に腕を伸ばし、体を左に一歩……
「ゆっくりしていってね」
「ありがとー!」
ドアを閉めた母さん。だぁーっ。いきなりあのタイミングは焦
「あ、興くん、今度お返しを買いに行くから、忘れないでね」
「承知っ! にーにっさんしっ」
完璧な体を張ったおとり作戦。なんちゃらタルトはばれておらぬな。
「えっ! そんな別にいいのにー!」
「いいのいいの。今度百貨店でチョコレート市場が開催されるから、お返しさせてね」
「ほんと!? うわーそれあたしも行きたーい! ねねおっきー一緒にいこーよ!」
なんとまぁ輝かしいおめめだこと。
「ん? ぉ俺の家族編成に日織も混ざるってーこと?」
「うん! だめ?」
答えはもちろん。
「うし。行くか!」
「やたー!」
ああもうそんなに笑顔弾けてんならなんでもいいや! お付き合いでもなんでもどんとこーい!
「それじゃあ日織ちゃんも一緒に行きましょう。なんでも好きなのひとつ、買ってあげるわ」
「きゃー!」
手を合わせながら笑顔でぴょんぴょん飛び跳ねている日織。負けじと跳ねまくっている赤いリボンだった。
短編61話 数あるチョコ好きからもらうチョコ 帝王Tsuyamasama @TeiohAoyamacho
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