第58話 ちょっとしか離れていないのに


 あかりは平蔵のレシーライフルを使っている。ショートスコープの倍率は慣れていないから等倍でドットサイトとしてスコープを使う。


 いつものフィールドでいつものメンバー達なのだが平蔵が居ないだけで何となく知らない場所に来ているみたいで落ち着かない。仲良くしている常連仲間もいつも通り接してくれるけど何か違う。


 虚無感というのだろうか…。


 ゲーム中での孤独感は己を強くしていつも以上に敵を集中して撃つことが出来る。初弾ヒットを意識していて、いつもなら1ゲーム五本位マガジンを撃ちきるのだが今日は三本で収まっている。

 平蔵のレシーライフルはインナーバレルとパッキンを変えていて弾道を素直にするためにリコイルも抑えているからかなり撃ちやすくなっている。


 あかりはいつも平蔵が感じているリコイルを受け止めながら敵を狙撃する。ヒットが取れる度に平蔵と一緒にヒットを取っている気がする。動作もアタッカーよりも少し下がった位置で二列目から敵を撃破するような普段と違う動きになっている。いつもは後ろに平蔵が居てくれる安心感の中でのアタッカーだけど仲間のフォローする位置の責任感はなかなか圧が凄いー。


 あかりは大きな声でひたすら索敵して味方に情報を伝達しまくった。


 少しずつだがスコープの倍率も調整しながら撃てるようになってきている。正確な距離は解らないが40m位なら2倍にして小さな隙間を撃つガス圧の変化で弾道のブレが生じるから二、三発ずつ撃つのを気にしている。


 仲間達との連携でフラッグを取ったー。

「久し振りに取ったぁ!皆さん援護ありがとう!」

「ライトさんの後方支援あるから連携が上手く行きましたよ!」

「いやいや!そんな事無いです!」

弾抜きしながらセーフティに戻ると、いつもの席に平蔵が来ていた。

「え!どうして!?」

「仕事早く終わったから午後から参加しに来たよ」

あかりは平蔵に抱き付きたくなったが周りが気になり衝動を抑えた。


 準備をしている平蔵にサンドイッチを食べながら午前中のゲームの話をたくさんした。平蔵はニコニコしながらそれを聞いている。長いこと離れていたような感覚で一日しか離れていないのに積もり積もった話をフルオートで平蔵に撃ち込んだー。


つづく

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