第57話 サイフォンの原理
サイフォンに揺れる珈琲、フローリングの隙間に埋まるBB弾、平蔵に内緒で買ったドットサイトを覗くー。
あかりはMP7に無地のドットサイトを乗せてコーヒーを飲みながら眺めている。
「格好いい!バランスが良いよね!t1とMP7は相性抜群だわぁ」
あかりはパシッパシッと写真を撮る。
今週末、平蔵は出張で東京へ行っているからあかりは一人でサバゲーに行くー。
「一人でサバゲー行くのって…初めてかも!なんか緊張するなぁ」
MWSマグプルカスタムとMP7をガンケースにしまう。マルチカムのチェストリグ、ヘルメット、グローブ、ファーストライン……。装備品をカバンに詰め込む。
いつも二人でワイワイしながら準備しているが、一人で準備をするのは寂しい。
ーピッピ。
平蔵からLINEがきた。
“明日の準備してるかい?サバゲー行けないと思うと気力がなくなる~”
あかりは平蔵からのLINEを見ながら愛しさが増しているのにキュンとした。
“平蔵と一緒じゃないとなんか寂しい”
“俺も寂しいよ”
“ニコイチだね!”
“だね!”
“アキバには行けるの?”
“明日、久し振りに昔の馴染みとアキバで会うことになってるよ”
“昔のチームの人達?”
“うん、さっきそれを思い出してたぁ”
“楽しんできてね!”
“ありがとう!あかりちゃんもソロサバゲー!楽しんでね!”
“うん!ありがとう!”
二人の会話は出逢った頃と何ら変わらない。
サバゲーが齎した幸福が二人を包み込んでいるのである。
竹下通りでスカウトされて事務所に入り。撮影が無いときはコンパニオンとして宴会などで接客させられていた。歌やダンスのレッスン代も実費であった。六本木のパーティで知り合った社長の愛人になり水商売に入り運河に流される落ち葉のようになっていた。運河に輝く夜景は幻で決して掴めないー。
精神的に疲れ果て全てを捨てた。
平蔵と出会って急に自分の人生の歯車の嚙み合わせが合致したかのように回り出した。
ギシギシと嚙み合わせが悪かった時が平蔵という潤滑油によって滑らかに動いている…その実感している。
一日でも一緒に居ないとまたブルーのカーテンが閉まってしまう気がして不安になった。
サイフォンから平蔵の使っている東京タワーのマグカップに珈琲を注いで飲んだ。ガンケースからMWSを取り出して平蔵の愛銃を入れた。
“寂しいから!明日は平蔵の銃使って良い?一緒に居る気になれるから!”
“もちろんだよ!”
その返信の直後に送られてきた写真は二人で初めて行った居酒屋で撮った写真であったー。
つづく
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