第56話 強い敵は自分を強くしてくれる


 ヒットーーー!!


「軽バンの狙撃手をとった!」

斉藤からの無線で平蔵と徳川は親指を立てた。

「斉藤ナイス!」

「いや!里見君だよ!」

「サトミン!ナイス」

「サトミン……初めて呼ばれた…」

「敵は陣形変えるはずだからチャンスだな!」

徳川が材木裏の敵を警戒しながら中腰で一枚前のバリケに向かった。

 平蔵も逆方向のタイヤバリケに移動した。

材木の隙間に靴が見えたー。


 パンッパンッ!


 ヒットー!ナイッスです!


 材木裏から手を挙げながら激徒が一人出て来た。

「材木裏ダウン!」

「ナイス!」

徳川が前進して敵が居た材木バリケに貼り付いた。


「フラッグはいつでも取れるぞ!とるか?まだ戦うか?」

「とりたいけど!まだ戦いたい!」


 仲間内でそんなやりとりをしているとブッシュエリアにサンセイマスクの金髪の初心者がこちらを見ていた。

 平蔵は手招きしてフラッグを指差した。

「取っていいよ!早く早く!」

徳川もそれに気付いて初心者さんを援護した。

「初心者さんいるからフラッグ取らせてあげるよ!」

「オッケー!」

斉藤も里見も周囲を警戒しながらフラッグに近付いた。


 初心者は慌てながらフラッグのブザーを鳴らした。


 ブーーーーッ!


 黄色チームさんフラッグゲットでぇす!


「おめでとう!」

平蔵は初心者さんにグータッチした。他のメンバーも順番にグータッチしていた。


 強敵を倒して初心者にフラッグを取らせてあげられるまでになったかと平蔵は自分にドヤ顔をした。


 喫煙所で木下と激徒のメンバー達がタバコを吸いながら談笑していた。


 フィールドでは敵だが、セーフティエリアでは同じ趣味の仲間なのであり、お互いの戦略や武器を見せ合ったりサバゲー談義に花を咲かせるのである。男同士だと時には下ネタ言って笑い合うのである。


 千葉県のあちらこちらの木漏れ日射し込む里山には優しい発砲音が鳴り響くのであるー。


つづく

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