第53話 痛い遊び

 斉藤とアキバへ行った翌日ー。


 駐車場から席まで荷物を運び終わって平蔵は崩れ落ちた。

「どうした?」

「着るもの忘れたわ!!」

「マジかよ!」

「ティーシャツ、短パンでデビュー戦かよ!」

「良いじゃん!」

斉藤のブスな笑顔ーそして肩パンチした。


 ティーシャツ短パンにマリンタイプのヘルメット、プレートキャリア、ベイツのタクティカルブーツと言う出で立ちであった。手にはM14である。


 市街地フィールド。

 スタート地点でゲーム開始まで何となく空を見上げて戦場をイメージした。

 頭の中にはカリフォルニアドリーミンが流れている。

 フルメタルジャケットのワンシーンをイメージする。

 戦車に隠れながら前進ー。女の狙撃兵ー。


 がっちり装備の斉藤が俺を写真に納めている。


 前進していく斉藤を必死に追い掛けて行くと建物がたくさんある辺りで見失った。

「これヤバくないか!」

一人になった平蔵は溢れるアドレナリンを抑えながら小窓から外を見る。


 パチ!

 いってぇ~!ヒットです!


 眉間を撃たれた。

 初ヒットであったー1発も撃たずにヘッドショットされてしまった。

 撃たれたデコを擦りながらフィールドの出口を探した。その出口に辿り着くまでに何発も撃たれた。

「いやぁ!いてててて!めっちゃ撃たれた!地肌のBB弾めっちゃ痛いぞ!」

 しかし、この非現実的な空間で撃たれてるだけなのだが心が踊っている。

 精神が解放されている。撃たれる度に何かが弾けていくー。

 望の往復ビンタよりかは痛くないから耐えられる。

 そしてフィールドで初めて撃ったのが弾抜きボックスであったー。


 しばらくして斉藤も戻ってきた。

「何ニヤニヤしてんだよ!キモいな!」

「斉藤よ!いや!斉藤様!サバゲーはめっちゃ楽しいぞ!!」

「お!それは良かった!」

「明日も来ようぜ!」

「まだ一戦目だよ!」

「もう、どハマりしたわ!」

「ハマりそうだとは思っていたけど一発でハマるとは!笑えるな」

斉藤は弾を込めながら笑っている。

 その後もひたすらに撃たれまくった。

 敵が見つけられない。

 ゴーグルの曇り、地肌に被弾ー。

 しかし、平蔵はフィールドを走り回りながらどっぷりハマってしまったのである。


 それから毎週通うようになり斉藤とスケジュールが合わなくても一人でサバゲーへ行っていて同棲相手の望は呆れて出て行ったー。

 平蔵は悲しくも無く望が居なくなって少し広くなった部屋にはミリタリーグッズが増えていった。

 銃も東京マルイM14とナイツSR16を所持している。

 酒や女やバイクに見向きもしなくなりサバゲーの事ばかり考えるようになっていったのである。


つづく

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