第50話 あかりスタイル!

  東京マルイガスブローバックm4a1カービンー。

 四面レールハンドガード、クレーンストックー。コヨーテタンをベースにオリーブグリーンを薄くまだらにペイントする。

 内部はノーマルである。


 ベランダに新聞紙を敷いて発泡スチロールを台座にして乾かしているレシーライフルタイプの愛銃を平蔵は煙草を吸いながら眺めている。

 そして穏やかな雲の流れが眠気を誘う。


 常に仲間の位置を確認する。

 射程距離を把握する。

 敵からの射線を読み取る。

 状況報告と動作の判断。


 目的はゲームの内容による。フラッグ戦、殲滅戦、メディック戦など、それによって戦術も変えていくー。平蔵とあかりは基本的にツーマンセルで動いているから無線も必要な時以外は使わない。状況確認、指示、自分の動きの報告なとである。


 それぞれだが、それぞれだが、それぞれなのだが好きか嫌いはある。同じ趣味なのだが、同じ趣味を楽しんでいるのだが、好みが違うから相見えない人も居るのである。それらを無理に仲良くする必要は無い。フルオートでひたすら撃ちまくりたい人も居る。ギリースーツで隠れていたい人も居る。軽い装備が好きな人も居る。走り回りたい人も居る。たくさん敵を倒したい人も居る。

 それぞれなのだが…。

 平蔵はなぁなぁで回避する術を持っているのだが、あかりちゃんはハッキリしているのである。


「女の人でその銃は重くないですか?俺の持ってみてくださいよぉめっちゃ軽くて使いやすいですよ」

若い男の子があかりちゃんに話し掛けてきた。

 あかりちゃんはその彼に顔を近づけて目をガン見しながら…。

「結構です」

と、一言。


「ヘルメットだと頭痛くなったり蒸れたりしてキツくないですか?自分も昔は被ってたんですけど止めちゃいましたよぉ」

熟れた青年がスタート地点まで向かう途中であかりちゃんに話し掛けてきた。

 あかりちゃんは足を止めた。青年が振り返る。

「そうなんですよぉ!痛いんですよ!蒸れるんですよ!アタシも止めようかなぁ!…とは残念ながら言わないよ。君の会話はアタシに不必要だから無理に話し掛けてこなくて結構です」

あかりちゃんは無表情でその彼に言った。


 俺が援護しながらあかりちゃんが前に出る。

 あかりちゃんは自分より前で撃ち合っているチームメイトを見つけた。

「敵はどっちの方向でどこらへんにいますか?」

「あ!解らないですぅ」

「じゃあ前にいないで!!」

あかりちゃんはそう言いながら違う方へ進んでいった。


「プレキャリとかに弾当たっても気付かないときありますよねぇ」

あかりちゃんは冷めた目線で無視している。

「ヘルメットとかガチ装備って弾当たっても気付きにくくないですか?」

あかりちゃんは煙草を消した。

「言いたい事はハッキリと言った方が良いですよ?アタシが弾に気付いていないと言いたいんですか?それならスタッフにあのガチ装備の女性はゾンビっぽいですよと言うべきですよ。好きな装備していてどこのフィールド行っても一度もそういう指摘をされてないし、自分でも気を付けているのでプレキャリに弾が当たったか解らない貴方に指摘されたくないですよ…不快です」

あかりちゃんは場の空気を敢えて読まないのである。

 知らない人達が集まって遊んでいる以上は他人への配慮が必要であり装備の好みに対しての意見は御法度なのである。


 知識マウントを取ろうとする輩、俺強いぜぇクズ、ひ弱な人ーこれは“疲れた”“銃が重い”等と言って回りのテンションを下げる奴ー。

 これらの系統の人はあかりちゃんに話し掛けると撃沈されてしまう。


 俺はそういうのを見ていて「あかりちゃんは格好いい!毎度毎度、惚れ直すわぁ」となるのである。


 あかりちゃんから言わせると、俺の知っていることも知らないふりをしながら「そうなんすか!マジっすか!なるほど!」等を繰り返して去なしているのをみてツボに来るから止めてと言うのである。


つづく

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