第40話 流動10型
グルグルと解りずらいジャンクションを越えた辺りから気温の違いが現れてきた。
「なんか長野県とは暑さの質が違うよね!」
「だね!重い感じの暑さと言うか、東京の暑さと似てる気がする」
「そうだね!懐かしく感じるね」
二人の奇跡的な出会いから数年経っていて自然な流れでサバゲーを遠征している。
平蔵は無駄を省いたシンプルな生き方を選択しているつもりだったが、あかりちゃんという灯りを見つけ紫色の道を優しく照らす街灯になってくれている。怖い物など何も無く生きてきた拘りも誇りも無かった。だが、今はその街灯を失うのが怖い、サバゲーでの連携への拘りもある。あかりちゃんと同じパッチを付けている誇りもあるのである。
太平洋からの熱風を感じながら運転しながらニヤつく平蔵の横顔を見ている。
二人は無駄な会話はしない、気を使ってしないのでは無く必要無いからしないのである。拭えない過去をお互いに抱えているが足並みを揃えて歩み、先へ行くのに過去は無駄な事なのである。
東京のビルを見上げながら過ごしていた孤独感に支配されていた時はざっくりとした幸せを夢見ていた。刹那の幸せを繰り返して「こんなもんか…」という諦めの繰り返しで麻痺していた。
でも、今、ディーゼルの振動で会話が大声になってしまう車を運転する平蔵の隣に居て幸せを実感する。いや、全身に入り込んで来ている。
「愛知ってさぁ!マラソン大会が有名だっけな!」
「なに急に!」
「あんこ挟んだサンドイッチと喫茶店と!マラソン大会が有名だっけなって!思ってさ!」
「名古屋ってシャチホコでしょ!!」
「あ!確かに!シャチホコか!!」
「シャチホコだよ!」
「見に行こう!」
「いこいこ!!」
やたら大声で会話する二人。
しばらくしてー。
「あれ!?愛知じゃ無くて岐阜に行く予定じゃなかった??」
「あ!!」
「ね!!」
「間違えて愛知方面来ちゃったわ!」
「まぁいっか!!」
「じゃ!明日は愛知のフィールドで遊ぼう!!」
「イイねイイね!」
岐阜への旅の予定が愛知から岐阜という旅に変更になった。
作戦は常に流動的なのであるー。
つづく
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