第38話 啄木鳥

 開戦ー。


 ダッシュ勢がシューティングレンジ側の方へ向かうのを見送ってから、俺とライトはCQBへ、俺は山の斜面の下側を進みCQB内を進むライトからの報告を待った。キャットウォークの門で止まって尾根のドラム缶地帯を索敵すると数人の敵を確認したライトがハンドサインで俺に情報を送った。俺はわざと敵に見えるようにEポイントへ移動した。

 敵は狙い通り俺を撃ってきているが弾は届かない。

「武田方はあの中には居ないな…」

俺は狙撃位置に付いて牽制で敵の居るバリケードを順番に撃ってライトに倒しやすい敵の位置を確認させた。

 ライトはしばらく俺と敵の撃ち合いを見てからキャットウォークから塹壕へ身を屈めながら移動して敵の側面から一気に三人倒した。

“あっ!ヒット!”

“ヒット~”

“痛ってぇ!ヒット~~~~!!”

 ライトはそのまま外周のバリケードへ隠れて俺に親指を立てた。

「ライト……あかりちゃんは化け物だなぁ~なんだあの完璧な三人抜きは……」

俺は呟きながらライトに合流した。

「すげ~格好よかったよ!」

「上手く行ったね!」

「完璧な側面突きだったね」

「でも山県さん達が居ないからこの尾根からが本番だね!」

「チャーリーからアルファの外周に必ず居るから今度はライトがチャーリーで引き付けて俺が角度とるよ」

「りょ!櫓とベータからの狙撃に気を付けてね!」

「俺がやられたら構わずにね!」

「死亡フラグ立てたね~」

俺は敬礼してから枝バリケの斜面を降りた。


 外周のL型バリケに敵影を確認した。角度が悪くて狙えない。向こうはこちらには気付いていないが一人であそこへ居るのが何か臭うー。


 あかりちゃんは俺の位置を確認して1つ前のバリケへ付いて俺に合図してきた。

 俺は前方のバリケに敵が一人居ると合図した。あかりちゃんは頷いて敵が居そうなバリケへ撃ち込んで確認した。

 数発撃ち込んでこちらに気付いて撃ち返してきたのは諏訪姫であった。


「姫だ!」

あかりちゃんは声を出した。

 俺はそれに反応して周囲を警戒した。必ず山県さんが居るはずで、あかりちゃんは位置バレている。撃たないと言うことは見えていないか俺を索敵しているか…である。


 緊張が走りこめかみに汗が滴る。


 アルファ周辺だとすると葉が茂ってきているからチャーリー付近の視界が悪いはず、櫓周辺だとすると他の敵に裏をかかれやすいー。

 俺は勝負に出ることにした。


 このまま斜面を降りてリールドラム経由でボックスバリケへ移動して姫を倒してからライトと挟み撃ちをする算段で動くことにした。


 ライトに前に出る合図をして頷いたのを確認してから一気にリールドラムまで降りた。ライトは姫と牽制で撃ちあっている。

 俺はボックスバリケへ動き出し数歩進んで疑問を持った。


“ん?何故、姫はライトと牽制で撃ち合っているんだ?アルファに山県さんが居るとして視界の問題だとしたら、姫は下がって俺達を誘い込んだ方が討ち取りやすいはず!ヤバイ!これは!読みが外れたぞ!!”


 振り返るー隠れていたリールドラムの裏で山県さんがピンクの銃を俺にロックオンさせてニヤついていた。


「やられた~~~~~!」

シチュエーションヒットである。完璧にやられてしまった。


 あかりちゃんはそれに気付いて一気にチャーリーへ下がった。


つづく

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る