第37話 良き良きライバル
チャージングハンドルとボルトキャッチを抜いて、キッチンペーパーで丁寧に汚れを拭き取る。汚れが付いたキッチンペーパーをニヤつきながらゴミ箱へポイッと投げるーそして、外れた。
あかりちゃんはセラコートのレシーバーを舐めてしまうんじゃ無いかと思うくらい顔を近づけながら磨いている。
窓の外にマルチカムが揺れていて、俺はそれを見ながらミルをカリカリと廻している。
「あかりちゃんMWSにすっかり夢中になっちゃったなぁ」
ぽそっと一言ー。
「なに?嫉妬?この子はねぇ手入れをしてあげないと上手く動けなくなっちゃうのよ!こうやっていつもいつも可愛がってあげないとねぇワタシの“ウサギちゃん”」
「ウサギちゃん…」
俺は悔しいからGR25のバレルを掃除し始めた。
「やはりGBBかぁ」
「そう!GBBはヤバい魅力を持ってる魔性の銃よ」
「羨ましいもんね~」
「へいちゃんもMWS買おうよ!ワタシはハンドガードをガイズリーのSMRmk4にしたいの~んでマグプルストックに変えるからへいちゃんはレトロな感じでさぁ!」
「近代的な感じになるのかぁ~」
あかりちゃんは俺に抱き付いてきた。
「うん!でも、すっごく高いの~ねぇ~でも~格好いいんだよぉ」
猫なで声で俺の耳元で囁いてきた。
「あかりちゃん!ズルいなぁ~そのハニートラップは反則だわぁ」
あかりちゃんの悪戯な笑顔にオーバーキルされている。
フィールドには木漏れ陽が射して穏やかな風が抜けている。
あかりちゃんのOD装備は相変わらず格好よくてGBBもマッチしている。俺はODのパンツにナイトカモのジャケットのいつもの装備である。二人の“毘”パッチもだいぶ色褪せていて新しいのをそろそろ買わないとなと……。
たまに俺達に会いに来てくれる人が“毘”パッチを売って欲しいと言うが売り物では無いから困ってしまうし俺とあかりちゃんはチームでは無くて恋人である。背中を任せられる絶対的な相棒なのである。
そして“毘”を付けている理由は上杉謙信が大好きだということだけなので深い意味が無い、ただこのフィールドにはライバルの武田菱の山県さんがいるのである。
最近は川中島と称して山県さん夫妻と撃ち合いというコミュニケーションをとって遊んでいる。
山県さんの狙撃に何度もやられているからゲーム開始に彼のポジションを把握する必要がある。俺とあかりちゃんはマンセルで山県さんが配置しそうな場所をクリアリングするのである。
CQBかだとチャーリー辺りのドラム缶地帯から狙撃される可能性が高い。
櫓からだとアルファとチャーリーの間のバリケードから狙われてしまう。無難なのは誘き寄せる戦略が良いのか……。
「横並びの動きで行こうか?」
「なるほど!視野を広げる作戦だね!」
「うん!カゲトラが日陰移動でワタシはそれに合わすよ」
「オッケー!CQBの外周の白車廻りでデルタをクリアしてからチャーリーへ進もう!」
「だね!今日は人が多いからその他も倒しながら山県さん夫妻をやっつけて川中島を制する!!」
「おう!山県さんと甲斐姫は手強いからね!」
そしていつも通り。
15分復活無しフラッグ戦が始まったー。
つづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます