第36話 開花

  先に準備してフィールドインをして敵フラッグ位置までのルートイメージしていると少し遅れてあかりちゃんが来た。

「あれ?それどしたの?」

「ヘヘヘ…一益さんから借りたぁ!」

「ガスブロ?」

「うん!めっちゃ重いけどかっこええ!」

「416かな?」

「うん!マガジン重い!!」

「一益さんはガスブロ目覚めてるねぇ」

あかりちゃんは常連仲間の滝川一益さんからガスブローバックのアサルトライフルを借りていた。

「あかりさん、使ってみてくださいよ!クセになりますよ」

一益さんはニコニコしている。


「はーい!では、殲滅戦15分3,2,1スタート!!」


「よっしゃ!ガスブロ!ガスブロ!」

あかりちゃんは満面に笑みで正面から尾根に駆け上って行った。

 俺は別角度から援護に廻る。


「青ドラム缶に二人!緑ドラム缶に一人!敵さん速いよ!!」

ガシャ!ガシャ!

電動では味わえないリコイルの威力を肩に受けてあかりちゃんは興奮している。

「おおおお!全然当たらない!?けどサイコー!」

あかりちゃんはマグチェンジしながらいつもよりも声が大きい。


「ヒット~~~~!サイコー!」

あかりちゃんは自分の跳弾でヒットしていた。

 重い銃を高く掲げながら満足そうにフィールドアウトしていった。


「あかりさんめっちゃハイになってたね!」

「なってたね!あんなテンション見たこと無いよ」

俺と一益さんは連携も忘れて顔を見合わせた。


 セーフティに戻るとあかりちゃんは、てぬぐいで一益さんの416を丁寧に拭いていた。

「一益さんありがとうございました」

「いえいえ!いつでも貸しますよ~それよりかなりテンション上がってましたね」

「ガスブロに惚れました!!サイコーです!」

「あかりちゃんのあのテンションはヤバいね!」

「なんか運命を感じた!」

あかりちゃんの中で何かが開花した瞬間であった。


 その夜ー。


「あ、痛たたたた~肩がぁ~~~!マッサージしてぇ!」

「ガスブロの洗礼だね!」

俺はあかりちゃんの肩をもんで上げた。

 マッサージしてもらいながら携帯に映る東京マルイm4MWSをあかりちゃんは見つめていた。


 俺は仕事帰りにエアガンショップに電池類とBB弾を買いに寄ると、なんとMWSが俺をジッと見つめてきた。俺もジッと見つめ返すとMWSの文字が浮かび上がって俺の廻りをグルグルと廻ってきたのである。

「あ~!もう!買うよ!買いますよ!ったく!!」

俺は店員を呼んでMWSとマガジンを五本、ガスを二本買ってしまったー。


 家に帰るとあかりちゃんはまだ帰っていなかった。

 俺はMWSをそそくさと家に運び込んで箱から出して何くわぬ顔でガンラックに混ぜて並べた。URG-IとSR15の間にこっそりと並べてあかりちゃんがいつ気付くかいたずらしようという魂胆で在る。


 米を炊いて味噌汁を作っていると、あかりちゃんが帰ってきた。

「ただいまぁ」

「おかえり!」

「あ!ご飯ありがとう!」

「忙しかった?」

「う~ん、細かい注文してくる客がいて対応して……あ?」

「ん?」

「あ!あああ??あ!?」

「なになに?」

「おおおおお!お?お?」

「どしたどした??」

「MWSじゃん!!!!」

「あかりちゃんの新しいアイリーンだね!」

「きゃ~~~~!ありがとう!東京マルイ!!!」

「いやいや!俺だろ!」

あかりちゃんは仕事着のままMWSを抱き締めた。

「軽いしグリップが細い!スリム!サイコー!」

喜ぶあかりちゃんの顔を見ながら俺も“ありがとう!東京マルイ!”と心の中で叫んだ。


つづく

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る