第27話 子供の頃と変わらないよ

 夢ー。


 赤い目、黒いボディ、愛のために仮面ライダーが戦っているときー。

 近所の資材置き場で友達達と祭りで買った鉄砲を持ち寄って撃ち合いをしている。

 時間を忘れてひたすら撃ち合っている。夕方になり始めると友達が一人一人帰って行く。俺は草原から顔を上げて一人一人見送る。

 気付くと月が資材置き場を照らしていて俺はもう誰もいないフィールドで一人で遊んでいる。誰にも気づかれないまま一人で遊んでいる。敵も居ないのに風に揺れるススキを狙う。錆びた空き缶を撃つ。


 月を見上げて自分を撃った。


 目を覚ますとあかりちゃんが着替えを終えて荷物を纏めていた。

「あ!ごめん!起こしちゃった」

俺は何故か泣けてきた。

「どうしたの?」

「小さい頃から…ずっと独りだったんだなぁと思ったら涙が出てきた」

「それ解るよ…心が痛くなるよね!でも今はアタシが居るしアタシには平蔵が居るし!これからはツーマンセルで生きていけるよ」

「ありがとう!」

俺はあかりちゃんの微笑む表情に安心して布団から出て直ぐに準備をした。


 あかりちゃんと初めて会った市街地フィールドは90人集まっていた。

「やっぱ多いね~」

「そだね~」

「この子達のデビュー戦には相応しいね!」

二人の新しい相棒は朝陽に当たり黒光りしている。ハンドガンもタンカラーで揃えた。


 レシーライフルとSR15はバッグに入れたままでテーブル近くのガンラックにはurg-IとSR25が並べてある。

「あれ?このドットサイトとフォアグリップは?」

「あ!バレた!」

「格好いいね~!俺も埃被ってたスコープだ!」

「たくさん守ってもらわないとだ!見失わないでね!」

「もちろん!」

あかりちゃんの銃にはマグプルタイプのフォアグリップとロメオタイプのドットサイトが装着されていた。

 自分のには以前から持っていたサイトロンのスコープを載せた。


 フルオート無限復活カウンター戦。45対45で今日のゲームは始まった。


 二人の立ち回りは少し変わった。膝が心配だから俺は開幕ダッシュはしないで戦況を見ながらゆっくりと進むー俺が少し前にでて索敵して安全確保してからあかりちゃんが前に詰める。あかりちゃんが索敵して俺が狙撃しつつあかりちゃんが角度を取って撃つという各個撃破スタイルが自然と出来ている。

 あかりちゃんはリコイルが気に入ったのかフルオートをよく使うようになっている。俺のSR25はホップ調整がかなりシビアで0.2の弾だと飛距離は延びるが弾道の安定はしないパッキンとバレルを変えるかと思いながら一日使ってみることにした。


 あかりちゃんはリコイルになれていないからかよく撃ち負けている。

「ヒットー!!負けたぁ!」

あかりちゃんは撃たれても笑いながら復活ポイントへ戻っていくー。


「リコイルは良いねぇ!だいぶブレてしまうけど…」

「撃ってる感じが興奮するよね!」

「もうちょっとしっかり構えないとだね!さっきのゲームはワンヒットも取れなかった~」

「慣れれば大丈夫だよ!それよりは重くない?」

「大丈夫!フォアグリップがあるから持ちやすいしこの重さが好き!疲れたらブラックナイト出す!」

銃を上げ下げしながら笑っている。

「平蔵のSR25の使い心地は?」

「結構良いよ!海外メーカーもかなり良くなってるって実感できる!今度は偵察部隊装備が欲しいね!」

「あ!確かに銃が偵察部隊っぽいもんね!」


 この日は有名なユーチューブの人達も来ているらしく全体的に盛り上がっている。

 天気も良く小春日和であった。


 市街地を避けて大回りで進んだー。

 キャットウォークを過ぎてリールドラムに隠れてあかりちゃんの位置を確認すると“あの時”の位置に居た。

 こっちを見てるあかりちゃんをジッと見つめていると首傾げて不思議そうにしている。

 俺は微笑んでから前のバリケードに移動した。索敵して敵影が居ないのを確認してあかりちゃんにアイコンタクトするとあかりちゃんが俺を通り越して先のバリケードまで移動した。今度はあかりちゃんのアイコンタクトで俺がブッシュへ移動してフラッグのある電話ボックスを確認、周辺の敵を見つけた。林側に二人、市街地寄りのバリケードに二人、電話ボックスに1番近い建物二階に一人、俺はあかりちゃんにハンドサインを送って匍匐でブッシュを進み一番怖い建物二階の敵を狙った。二発撃ち込むと敵はキョロキョロとこっちを警戒しているが俺の位置はバレていないようであった。

 しばらく動かないで居ると敵が二階から銃を構えた“バレた!”と思ったその時「ヒットーー!」敵が手を外に向かって振った。そのタイミングであかりちゃんが俺に合流してきた。

「あの人ガンヒット気付いてくれたよ!」

「すげぇな!あかりちゃんが倒してくれたのか!しかもVSRのバレル狙ったの?」

「うん!勝負に出たの!」

この娘はニュータイプかな……。


 俺はあかりちゃんに待機するように言ってから囮になった。バリケード裏の敵の気をそらす牽制撃ちをして敵から見えるようにボックス型のバリケードへ隠れた。パラパラとバリケードに撃ち込まれながらあかりちゃんへ合図をした。


“あの時と同じだ!”


 初めてあかりちゃんと会った時のシチュエーションである。


 しかし、あかりちゃんはフラッグを取らずに俺のバリケードに撃ち込んでいる敵を倒した。そしてあかりちゃんが俺に“来い来い!”の合図した。

 俺は銃を背中に回してハンドガンを抜いてフラッグまで警戒しながら向かった。あかりちゃんも周りを警戒して俺の背中をカバーしてくれた。


“プーーーーー!”

かなり久し振りのフラッグゲットをしてそれをスタッフさんが写真を撮ってくれた。俺とあかりちゃんは“毘”パッチが見えるように並んで写真を撮ってもらった。

「俺はこの写真を遺影にするわ!」

「アタシも!」


続く

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