第19話 なんて日だ!!
どこのフィールドも知らない者同士がワイワイしている。敵チームの人達との見えない壁は昔と変わらずに多少感じるが比較的にワチャワチャしている。
夕焼けの中にカラスが鳴きながら山へ飛んでいくー。
「時間経つの早いね…」
あかりちゃんは寂しそうにガンバッグへブラックナイトをしまっている。
「ホントだね~」
「平蔵さん…」
「長野に帰るんでしょ?」
「うん…」
「アタシも連れて行って!」
「はへ?」
「このまま一緒に行きたい」
「いや、だって」
「ごめん…無理だよね」
「あかりちゃんはまだ若いしね…俺はもうオッサンだしね」
「アタシも結構いってるよ」
「そうなの?」
「36歳だよ」
「俺と大して変わらんじゃん!」
「いや!まだ三十代だし!」
「四歳しか違わないよ!」
「それが大きいでしょ?」
「いやいや!変わらないよ」
「そっかなぁ~四十にはまだまだ時間があると思ってるけど」
「あっ!!と言う間に四十になるよ」
「怖い……」
「怖いって言うな!俺はその領域にいるからね!」
「……だね」
「でも、部屋とか仕事とか生活とか色々あるじゃん?」
「うん!仕事は今はしてない!部屋は来月に更新だから引き払う!」
「タイミング良すぎない?」
「そうなの!昨日からアタシもそれを考えてたの!それで思った!着いていきたい!一緒にサバゲーしてたいって!」
「そしたら覚醒したのか?スーパーサイヤ人かよ!」
「あ!それだ!」
「マジか!……よし!行こう!!トゥルーロマンスのクラレンスとアラバマだ!」
「なにそれ?」
「長野に着いたら一緒に観よう!俺の一番好きな映画!」
「観る!」
何にも無いと思っていた。無意味に時間が流れていてそれにフラフラと乗っかって雲の流れを眺めながらフラフラとー。
しかし、こんな事があるのかー。
夢なら冷めないでくれよ。自分の人生の幕が降りて再び幕が上がった。
そこには素敵なヒロインがいるー。
“ホントに第二章に入った……なんも無いと思っていたけど……俺にもあったんだな……”
「よし!二人でサバゲーマーだな!」
「おう!着いてこい!」
「はい!」
俺はあかりちゃんの荷物を持って小さく敬礼した。
あかりちゃんのアパートは市営グランド近くの可愛らしいアパートであった。
俺は車を停めてあかりちゃんが荷物を持ってくるのを待っている。クラレンスがアラバマの荷物を取りに行く怪しい店をピンクのキャデラックから見ている感覚である。
この市営グランドのフットサル場は懐かしいな…西八王子に住んでいるときに通ったなぁ。あの当時はロナウジーニョがたくさん居た。俺はシニョーリのユニフォーム着てたなー。シャッターの降りた喫茶店のカレーが美味しくて少し傾いたスプーンで食べてたなぁ。
山梨県へ入る頃にはあかりちゃんは寝ていた。
俺は流れるオレンジを横目に法定速度で車を走らせた。
諏訪パーキングへ着く頃にあかりちゃんは大きく伸びをしながら起きた。
「雪!?」
「うん!」
「久しぶりに見る」
「あ!松本市出身だったね」
「うん!……諏訪湖かぁ」
諏訪の夜景を眺めている。
「明日は俺は仕事だから部屋でゆっくりしててね」
「うん!ありがとう」
「帰ったらこの先どうするか少し話そう!」
「うん!」
あかりちゃんは携帯の画面を見ながら返事していた。
俺の暮らすアパートはワンルームで山沿いにある。
窓から山のどんぐりに向かってたまにエアガンを撃っている。
殺風景でテレビとベッド、パーテーションにサバゲーグッズの俺の部屋にボストンバッグを持ったあかりちゃんがいる。
「ここが新しいセーフティエリアだね!」
「すっかりサバゲーマー的な発言だね!」
「うん!わくわくする!でもめっちゃ寒いね!」
「それがねぇ~苦手なんだよね!俺は残りの荷物持ってくるからゆっくりしててね」
石油ストーブのスイッチを押して部屋を出た。
自分の分とあかりちゃんの装備を持って部屋に戻ると上下スウェットに着替えたあかりちゃんがコーヒーを煎れてくれていた。
「お!よくミルと豆の場所解ったね!」
「凄く不思議なの!アタシがしまっている場所と同じ場所に同じような物があるの!」
あかりちゃんはミルをガリガリ回しながら言った。
「たまたまでしょ?」
「いや!これは平蔵さんとの繋がりだよ!だから無線機要らないかも!」
「テレパシー?」
「それね!」
俺はあかりちゃんを抱き寄せてキスした。
「よろしくね」
「幸せに出来ないかもよ」
「もう既に幸せだよ」
なんて日だ!!ー。
続く
※チャンバーパッキンは気温によって変化するから寒い地域の人は柔らかめのパッキンにするとホップが掛かりやすくなるかもね!柔らかいパッキンで押しゴムは少し硬いと良いような気がするよ。
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