第17話 ウレシ!ハズカシ!
ダブルの空き部屋があるがシングルは無い。今のシングルをダブルにしたらダブルの料金のみで良いとの事であった。
「それでお願いします」
あかりちゃんは即答していた。
「あかりちゃん意味分かってる?」
エレベーターの中で聞いてみた。
「解りますよ」
「俺の部屋をキャンセルしてダブルに二人で泊まるんだよ?」
「はい、そうですよ?」
「今日たまたま知り合っただけの男と同じ部屋に泊まるんだよ?怖くないの?」
「え?アタシをレイプする気ですか?」
「んな訳無いけど!!ストレートだな!」
「じゃあ問題無いですよ」
「……」
俺達は荷物を持って15階のダブルの部屋に移動した。
「まだ早いから少しだけ飲みに行きません?」
「良いね!」
俺達はガード下の立ち飲み屋に入った。
酒のケースを椅子にして生中とマグロのブツとたこわさと梅キュウを頼んだ。
「乾杯!」
「乾杯!」
「なんか凄い展開だね!サバゲーで今日知り合って、今は上野のガード下で酒飲んでる!」
「楽しいですな!平蔵さん!」
「ですな!あかりちゃん!」
「カゲトラの方が格好いいですよ!」
「カゲトラはただ上杉謙信が昔から好きで毘と上杉家の家紋パッチを付けていて、それがたまたまツイッターでバズってたからであってね!呼ばれたこと無いからね!」
俺は七年ぶりにサバゲーを復帰した事や前は葛飾区に住んでいたこと、若いときに多少の悪さをしていたことなどをソフトに話した。初対面で自分をさらけ出す事には何の抵抗もないがどう思われても構わないという諦め的な思いもある。
ほろ酔いでホテルに帰ったがエントランスで車にバッテリーを忘れたことを思い出して先に部屋に戻るように言って俺は車へ向かった。
今回のサバゲー遠征は内容が濃いものになっている。
周りを気にしないで自分の趣味に没頭しようと決めて隙あらばサバゲーに行っている生活に突如として現れた“灯り”である。
「今日のサバゲーはナンバーワンに楽しかったなぁ……」
パーキングの端っこでタバコを吹かしながら夜空を見上げた。
ホテルのドアを開けると同時にシャワールームからガウン姿のあかりちゃんが出て来た。
「おっと!ごめんよ」
「大丈夫ですよ!おかえりなさい」
「あ、た、ただいまっす」
俺は小さなデスクのコンセントにバッテリー充電器を繋いでバランスチャージでリポ7.4v1100am20cを充電を開始した。
「あ!アタシそれ買い忘れた!」
「確かに!俺も言うの忘れてたな、明日は俺の使えばいいから問題ないけどね」
直ぐ隣に居るあかりちゃんからは良い香りがしている“俺は変態かよ!”と思いながら鏡を見ると照れ笑いが溢れていた。
「キモッ!」
自分のニヤつく顔を見て呟いた。
「キモくないですよ!アタシはタイプですよ!」
「え?」
あかりちゃん濡れた髪で俺を見つめてきた。
“いやいや!マジかぁ”
猫の目のような大きな目で見つめられて居るうちに思わずーキスをした。
色んな物を手に入れ損ねてきた人生であった。チャンスは何度かあったけどその都度何かによって狂わされてきて大した物も持っていなかったけど、大した物でも無い物を失ってきた。希望なんて持たないようにと心に決めて他人を信用する事は無くなっている。独りで遊んでいたいー。今、暖かな唇を重ねているこの超絶美人のあかりちゃんも初めてのサバゲーでアドレナリンが出ていてその延長で気まぐれなだけだと…。
「すっごく馬鹿みたいだし笑われるかも知れないけどね」
「うん」
「平蔵さんが好きになった」
「歩いていてたまたま見つけた変な形の石コロを拾っただけだよ」
「馬鹿にしないで!アタシの勘は凄く当たるの!良いことも悪いことも!アタシは自分のソレを信じてる」
あかりちゃんの眼力は凄かった。
「ヒット!」
思わずー。
「ん?」
「完全に頭と心臓を撃ち抜かれたわ!」
「……あ!そういうこと!」
あかりちゃんは抱き付いてきた。俺も抱き締めた。
“賭けてみるか…”
俺はあかりちゃんを抱き締めながら頬の力を緩ませたー。
※リポバッテリーの充電器は少し値段が高くても良い物を用意した方がよい。過充電が防げるから安全に充電することが出来る。
一昔前はリポバッテリーは爆発する恐れがあった。爆発は言い過ぎ!餅みたいに少しずつ膨らんで破れるように火が出るのである。危ない!何度か見たことがあって俺はニッケル水素を使っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます