第14話 あの道から見えるのは輝く観覧車
あかりちゃんが着替えている間に喫煙所でタバコを吸っていた。
「お疲れ様です!」
スタッフさんが声を掛けてきた。
「お疲れ様です!今日も遊ばせて頂いてありがとうございます」
「こちらこそ遊んで頂いて!ありがとうございます!しかも初心者さんの面倒見てくれてありがたいです!」
「いやいや、俺も楽しかったですよ。しかし、あの娘置いてけぼりにされちゃって…駅まで送ることにしました」
「あ~!たまに在るんですよ」
「そうなんですか?」
「はい」
「サバゲー人口が増えた証拠ですな!」
「ですね!」
そんな会話をしていると
「お待たせしました!」
「おお!?」
私服に着替えてきたあかりちゃんは気にしていなかったがめっちゃ美人であった。指で挟んでいたタバコを落としてしまった。
一気に緊張してしまった。
「どうしたんですか?」
「あ!いや!大丈夫!い、行きますか!」
「はい!お願いします」
ニヤニヤするスタッフさんに見送られながら車へ向かった。
ヤバイ!車がめっちゃ汚い!薄暗いから気付かれないかな!
茜色に照らされたランクルはガラスが砂埃で霞んでいた。
ガダガタ道を走りながらナビの履歴を設定した。
「カゲトラさん!今日はありがとうございました!」
「いえいえ!こちらこそ楽しかったですよ。しかも、上達が早すぎ!」
「お教えが良いんですよ」
「ほぼなんも教えてないですよ」
「ホント楽しかった!ハマりますね!」
「もうサバゲーマーですね!」
「なれますかね?」
「なれますよ!」
「カゲトラさんは何処に住んでるんですか?」
「俺はめっちゃめちゃ遠いですよ」
「何処ですか?」
「長野県から来てます」
「ええー!」
「月一か二ヶ月に一回止まりで来てますよ」
「そうなんですね…アタシの実家は松本市ですよ」
「え!?まじで?」
「近いですか?」
「30分位で松本市まで行ける距離です」
「長野県にもサバゲー出来る所在るんですか?」
「在りますよ。10人位しか集まらないけど楽しいですよ」
「へぇ!いつもそこですか?」
「はい!」
「タバコ吸っても大丈夫ですよ」
「あ!ありがとう!」
「アタシも吸って良いですか?」
「どぞどぞ!」
「タバコ吸う女は大丈夫ですか?」
「全然気にしないですよ」
「ありがとうございます!」
「セッタ!?」
「はい!」
「久しぶりに見た!ヘビースモーカーですな!」
「すいません」
「格好いいですよ」
「絶対に嫌がられますよ」
「セブンスターは良い香りだから嫌いじゃ無いですよ」
「良かった」
ディズニーの灯りが幻想的に見えて葛西の観覧車のイルミネーションが平和に回っていた……あ!?
「ごめんなさい!ごめんなさい!!」
「どうしたんですか?」
「駅まで送ろうかって言ってたのに高速乗って葛西まで来ちゃった!」
「あ!アタシも夜景を楽しんでました!」
「申し訳ない!あかりちゃんは何処に住んでるの?」
「アタシも遠いですよ。カゲトラさんはこのまま長野県に帰るんですか?」
「いや、アキバに泊まって明日もサバゲーやりに行く予定です」
「アキバ?秋葉原?」
「はい!いつも夜はアキバのショップを回って飯食べてますよ」
「サバゲーショップ?」
「です」
「行きたい!」
「え?」
「行ったことないから」
「行きますか?」
「行きます!お邪魔じゃ無いですか?」
「全然!」
「今日はお世話になったからご飯も奢らせてください!」
「それは大丈夫ですよ!鯛焼き買って下さい!」
「鯛焼き?可愛い!もちろんです!」
アキバに行ったら門の鯛焼きをつい買ってしまうのである。
そして門にたい焼き屋の交差点の脇道にある安いパーキングに車を停めた。
「ついた!」
あかりちゃんは楽しそうに車から降りた。
「これは…惚れてしまうわ~」
心の中で呟いた。
「なんか言いました?」
「いや!鯛焼きはカスタードにしようってね!」
「それか!アタシは王道のアンコ!」
カスタードとアンコを買って取りあえずあの有名な交差点へ向かった。
「さぁて!軍拡!軍拡!」
「おう!軍拡!」
エレベーターから降りると壁一面の銃があり、あかりちゃんのテンションが上がっていった。
「おお!凄い!」
「ここは凄いよ!なんでも揃う!」
「初心者は何が良いですかね~!」
「どうなんだろ?自分の好きなモノを買うのが一番良いけど銃はここじゃ無くてね!良い店がありますぜ!姐さん!」
「おうおう!それを早く言えや!サブ!」
「ノリが良いね!」
「つい!」
そんな事を言いながら店内を散策していった。
俺は今回はヘルメットが欲しくて探しに来ていた。
ヘルメットを試しに被っていると隣であかりちゃんもヘルメットを被っていた。
「めっちゃ良いじゃん!」
「似合います?」
「頭は転んだりすると危ないからしておいた方が良いよね!俺はこれにする!」
「じゃ同じのにします!」
「え?」
「お揃いが良いなって…嫌ですか?」
「そんな事はないが自分の好きなモノを買った方が良いよ!」
「慣れた人が買う物をマネしていれば最初は間違いないかなって!それに二人でお揃いの装備してると格好いいじゃないですか!」
「惚れてまうやろ!」
俺は名前を忘れた芸人のネタでおちゃらけた。
「アタシは惚れてます!」
アタシは心の中で呟いた。理由は無く一目惚れ……でも確信している。
「最初に買うアイテムがヘルメットとは!受けるな」
「ヘルメット格好いい!」
あかりちゃんはヘルメットを被ったまま後ろに付いてきている。チラチラと見えるおでこ絆創膏が笑ってしまう。鳥山明の漫画に出てきそうな感じである。
あかりちゃんのコートを持ってあげて、プレートキャリアとガンベルトなどの一式を同じメーカーで試着してもらった。赤いセーターに黒いスカート、そしてマルチカムのヘルメット、プレキャリ、ガンベルト……不自然だが格好よかった。そしてスタイルがめちゃくちゃ良かった。
「あかりちゃんは仕事何してるの?モデル?」
「……ナイショです」
少しだけ間を置いて答えてくれた。
「うんうん!言わなくて良いよ!」
「ごめんなさい」
「謝らないで!さぁ!次の店に!」
「レッツ!」
あかりちゃんは装備品を一式買った。俺は荷物を強引に持たせてもらった。
「一度車に乗せよう!」
「うん!ありがとう」
すっかり会話がフレンドリーになっている。
続く
※BB弾
フィールドのレギュレーションにあった弾を使いましょう。プラスチックは室内フィールドだとOKな所もあると思うけどバイオBB弾を使っていれば間違えは無い。重さもあるから買うときに注意が必要!
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