第13話 おいてけぼり

 アタシは貸してもらった小さい鉄砲を持って1人で前に進むことにした。仲間もたくさん居るから安心である。車に隠れて頭を出しているとおでこに“パチッ!!”と痛みが走った。そして後ろに転んでしまった。

「ヒット~!!痛い!」

そして借りた鉄砲を投げてしまった。

 アタシを撃った敵が慌てて建物から出てきて鉄砲を拾ってアタシを起こしてくれた。

「ごめんなさい!大丈夫でした?めっちゃ派手に転んでたから!」

「すいません!ビックリしちゃって!」

アタシはペコペコ頭を下げながら小走りに出口へ急いだ。途中で流れ弾がお尻にも当たった。

「いて!!」

凛子のヒットをざまみろと思ってしまった罰だと思った。弾抜きしようとしたがこの鉄砲の撃ち方が解らずにあたふたしているとネットの向こうにある喫煙所からカゲトラさんが声を掛けてきた。

「ごめん!マガジンを渡してなかった!それ弾入って無いよ!ごめんなさい」

「え?このまま出ていいの?」

「大丈夫!」

テンパりながらフィールドを出て喫煙所に行くと凛子も居た。

 フェイスマスクを取って近付くと

「おでこ!おでこ!」

凛子が指差して笑ってる。

 おでこに手を当てると血が付いていた。

 カゲトラさんがポーチからティッシュと絆創膏を取り出してタバコを咥えながら貼ってくれた。

「お兄さん優しい!!」

「この為のメディカルポーチですからね!見事なヘッドショットだったね!ヘッドショットだけにね!」

おでこが痛すぎて笑えなかった。

「あ!アタシ達はさっきのグループと合流してね!3:3だからあかりはこのお兄さんと合流してね!」

凛子がタバコをそそくさと消して行ってしまった。

「え?」

「なんかあの娘が貴女の面倒見て下さいって行ってきたよ」

「マジかぁ~!なんかすいません」

「いや、いいっすよ!ぼっちは話し相手居ないから助かりますわ!」

「しかも、あの荷物はお姉さんの?」

「あ!?ですです!」

「席にCOACHが置いてあるからなんだろうと思ってた」

「すいません!勝手に合流しちゃって!」

「大丈夫ですよ。しかし、おでこに絆創膏って笑えますね」

「イタズラですね!」

アタシは絆創膏のお礼に缶コーヒーを奢った。


 何故かめっちゃ美人の初心者と遊ぶ事になった。

 見事なヘッドショットを食らって倒れるこの娘のリアクションを思い出すだけでツボに入りそうになる。

 お昼のカレーを二人で取りに行って溢さないように席に向かう途中にも思い出して危なく溢しそうになった。その都度、あかりちゃんはプン!としたがおでこ絆創膏が更に笑えた。


 女の人とサバゲーがこんなに楽しいとは!?


「お金を払いたい気分だぜ!」

心の中で呟いた。

「え?なんですか?」

「え?聞こえてました?」

「はい!」

あかりちゃんはカレーを口の周りに付けていた。


 プ!!


 コーヒーを足元に吹き出した。


「なんですか!もう!!」

「ピエロみたいになってますよ!」

俺はティッシュを渡した。

 ここでもメディカルポーチが役に立った。


 午後からのゲームで何故かあかりちゃんは覚醒していた。

 そんなに動きは早くないのだが俺の動きに付いてきていて俺の死角をカバーしているのである。

「上達するの早すぎない?」

「そうですか?サバゲーめっちゃ楽しい!」

「楽しいですよね!色々忘れられる!」

「はい!アタシもそのガシャッとするのが欲しい!」

「女性には重いですよ!」

そんな会話をしながらツーマンセルで敵を撃破していった。


 時間が経つのは早いものでラストゲームはフルオート殲滅戦であった。

 この前のゲームで半数近く帰ってしまい20対20位になっていた。

 あかりちゃんは経過五分位でヒットされて先にフィールドアウトしていった。

 俺はショットガンで数人と撃ち合っていたがキャットウォーク下で跳弾でヒットしてしまった。


 セーフティエリアに帰ると、あかりちゃんが立ち尽くしていた。


「どうしました?」

「凛子達…帰っちゃった」

「え?置いてけぼり?」

あかりちゃんはうつむいて更に頷いた。

「あらら」

「どうしよ」

「駅まで送迎があるはずだよ」

「聞いてきます!」

受付に向かうあかりちゃんを見送って俺は荷物を纏めて車に運んだ。

 車でスリーカラーデザードからジーパンに着替えてバラクラバからハンチングに変えた。

 セーフティエリアにいる参加者にお礼と挨拶をして回って居ると、あかりちゃんが近付いてきた。

「30分後にバスが出るみたいです」

「結構まつね」

「…はい」

「駅まで送ろうか?」

「え!良いんですか?」

「それ狙ってたでしょ?」

「……少しだけ!」

あかりちゃんはイタズラに微笑んだ。

「直ぐに着替えてきますね!」

「ほい!あの汚いランクルなので!」

「はーい」

見もしないで更衣室の方へ走って行ってしまった。


続く


※サバゲーに行くときは迷彩服や鉄砲を剥き出しで持っていくのは止めましょう。

まぁ説明は要らないな!

車で来ていてもコンビニなんかに迷彩服で入るのも止めておきましょう!フィールドに迷惑がかかりますのでね!

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