Day.90 学校行事も都市開発も楽しんだもん勝ち

 こちら実況席のプリンでーすっ!

 そろそろ試合に移らせてもらっても大丈夫でしょうか? 作戦会議は両チームともに順調ですか? そうですか〜順調でしたか〜確かに市長さんも神様も、ずいぶんと白熱した議論をエルフたちとなさってましたからね〜!


 では、選手の皆さんはグラウンドに整列お願いしますよ。

 ただいまから仁義なき『騎馬戦』……いえっ!

『ロボット大戦』をおっぱじめちゃいましょーーーーーーーーーーうっ!!


 …………はい?

 どうしました市長さん、急にこっちまで寄ってきて?

 ……はい? えっ神様もですか?

 はいはい……はい…………はい……………………えー、なるほど……。

 

 わっかりました〜! ボクの一存でオッケーしちゃいます!!

 なんたって両チーム代表者からの申し出ですからね。異存は出てこないでしょう!


 突然ですが、この『騎馬戦』でのみ特別ルールが新たに追加されました。

 種目の参加者は各チームにつき八体となっていましたが〜……ななな、なんと!


 合体ロボットの『騎手プレイヤー』として、市長さんと神様も電撃参戦でーすっ!!



*****



「──というわけで、チーム代表者が操縦しているロボットが落とされた時点で即・敗北っつー特別ルールになったわけですが」

「余計なことしかしないわね??」


 真っ赤に燃えるようなロボットの頭部に乗り込んだ少年おれに、地上から目くじらを立てていたのはスノトラ先生だ。

 ……ってか、すげー!! これが合体ロボットのてっぺんか!!

 長身かつ魔法で空が飛べる先生よりも目線がずっとずっと上だ!! 俺は飛べる!!


「これが日本男児のロマン!! ロボット最高!! 異世界ファンタジー最高!!」

「まさか合体する傀儡の組み合わせ表にとどまらず、操縦席の設計図まで書き始めるなんて……そんなに乗りたかったのね……」

「いやでも、相手チームもノリノリでしたよ。創造神のやつ、俺とまったく同じことを考えつくなんて……あいつもなかなか腕を上げたな?」

「なんの腕前? お笑いレベル??」


 自分の提案を取り下げられたスノトラ先生、ちょっぴり俺への当たりが強め。

 どうやらノリノリなのは俺と創造神だけらしい。まあしょうがないか、今からロボットにんだし!


 そしてついに決闘の時は訪れる。

 本当は『騎馬戦』の後も『綱引き』やら『竹取り合戦』やらチーム種目が目白押しだけれど、グラウンドはさながら最終種目のような盛り上がりを見せていた。いや、ただロボットたちのエンジン音がうるさいだけ?


「はぁあ〜〜〜はっ、はっはあ!」


 ぴかぴかと。

 自分自身が魔法陣から出現する時みたいな黄金の輝きを放ちながら、白組の中心を陣取ったロボットが鎮座していた。

 なるほど、あれが創造神の操縦、いや開発した大将ロボット……!

 でかいわまぶしいわうるさいわで超目立ってる!?


「見たまえ少年! 全能たる私が生み出した世界史上最高傑作を!」


 傍観者であるべき神様が俺たち従属を差し置いて世界史上最高傑作を生み出してどうするんだ、なんてツッコミは今更にも限度がある。

 手から足から腹から鼻から耳から口から、ロボットの至る部位から閃光がほとばしっている。ビームが全方位へ放たれる前兆だ!


「うぇええええええええええええええええええええええっ!? ナニコレ!?」


 ビームによってグラウンドはあっという間に焼け野原だ。

 俺が必死になって逃げ惑っているうちに、紅組のロボットたちは次々と倒されてしまう。


「おいおいおいおいちょっと待て!? ビームの威力も効果範囲もバグってるだろ!?」

「当然だろう少年? こと勝負の場において手加減なんかしてやらんぞ!」


 まもなく第二波が飛んでくる。あまりの威力に地響きさえ聞こえてきた。

 なぜその次元のビームを平然と連発できるんだ!? 普通その手の必殺技的なやつは、次の放出までにチャージタイムが発生して然るべきだろ!?

 反則を疑って抗議しようとする俺に、応援席からスノトラ先生の激励が。


「頑張ってね市長く〜ん! ボディをせっかく軽めに設定したんだから、もっと機動力を生かして脇から叩いて〜! 相手は地属性〜! 魔力マナ無限だからスタミナ切れなんて待ってもしょうがないわよ〜!」

魔力マナ無限!? いやいやっ、それは創造神のステータスであってロボットのステータスじゃないだろ!?」

「『騎手プレイヤー』もれっきとした種目の出場者よ〜! 特別ルールを忘れたの〜!?」


 特別ルール──『騎馬戦』に限り魔法使用もアリ。

 しまった、俺としたことが! そのルール、俺たちにも適用されちゃうのか!

 でもだからって創造神まで魔法チートアリかよ!? ロボットに創造神がバフ盛ってやがる!? せめてハンデを寄越せハンデを! こっちは人畜無害の魔力マナ無しですよ!?


「ハンデとか、そういう申し出は種目が始まる前にお願いしま〜す!」


 プリンからも途中でのルール変更NGを言い渡されてしまった。

 これじゃ背水の陣、これじゃ前門ぜんもん後門こうもんのなんとやらだ。逃げ場もどんどん失われてしまう。

 とうとう大将ロボットだけが取り残されてしまい、俺は絶体絶命の大ピンチ──



*****



「──……ふふ、ふふふふふふ……待ってたぜぇこの時をよぉ……!」

「何ぃっ?」


 不敵の笑みを浮かべ主人公ヅラした俺と、俺以上にロボット大戦の悪役ヅラがノリに乗ってきたらしい創造神が対峙する。


「少年よ、無駄な足掻きはやめて降参しても構わないのだぞ? この私が寛大な心で許してやろう」

「知らないのか創造神? ピンチであればあるほど、覚醒した時の爆発力もえぐいんだぜ──!」


 座席の正面で真っ赤に燃えていたボタンを叩きつけるように押してやれば、まもなく俺の考えた最強のロボットが最終形態へとトランスフォームしていく。


「聞いて驚け、見て笑え! これが俺の最終兵器! これが俺の最終形態──」


 爆散した。

 どうやら俺の設計が甘かったらしい。変形に失敗したロボットたちが、俺を宙へぽいと投げ飛ばし、自爆するように分解し、倒れ、崩れ落ちていく。

 ぎょっとした創造神が地上へ自然落下しないように、自分の魔法で俺の体を浮かせ、ゆっくりと着地させてくれた。


「だ、大丈夫か少年?」

「『しん・アンドロメダ・エックス・ウルトラ・プレミアム・エキシビジョン・バラエティ・モード=バージョン無限』っ!!」


 敗北してもなお、最後の口上を叫ばずにはいられない。

 俺はグラウンドで大の字になったまま、満面の笑顔で最終形態モードの名前を言い切って見せた。


「……ん? ごめん少年、何だって?」

「『しん・アンドロメダ・エックス・ウルトラ・プレミアム・エキシビジョン・バラエティ・モード=バージョン無限』っ!!」

「ふうむよくわからんが、少年がとても楽しそうなのは伝わったぞ!」



 ──もちろん『騎馬戦』はそういうゲームではない。



(Day.90___The Endless Game...)

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