Day.23 見下されていたのは俺たち人間だけじゃなかったらしい
軍神アレスは──アマゾン族の生まれ変わりは明かした。
「創造神としての『使命』とも表現できる。『
最高の世界……──!
自分を召喚した
俺は目前の赤い果実にはまったく手を付けないまま、軍神アレスに質問を重ねる。それはもう質問攻めだ。
「天神……ってやつに選ばれると、どうなるんだ?」
「天神が創りし世界こそ、天に在るべき星と認知を受けることになる。それは大いに栄誉ある行いだ」
「あ〜、要はあらゆる世界にとっての
「そうだ」
「……そ、それ…………宇宙がお前らの世界を『
アレスに肯定され、俺はへなへなと、白いテーブルの上で突っ伏した。
馬鹿な……「世界ランキング」だと!?
いや、まあ驚かないよ。俺は実はそんなに驚いてないんだ。
なぜなら都市開発ゲームにおいても、プレイヤーたちが制作した都市にランキングを付けるシステムはしばしば導入されているからだ。
しかしなるほど、知らなかった。
俺があの創造神に召喚されてから今までプレイしてきた、この都市開発ゲームは──例えるなら「オンライン」!
「嫌だ……俺は『オフライン』のほうが好きなんだ!」
「何?」
「プレイヤーとの競争要素が絡むと、どいつもこいつも似たような都市ばっか作りやがる。しょうがないよな、そうしなきゃランキング上位に上がれないんだから。でも俺は嫌だ。統一化されたテーマ、最適化されたプロセスにならうだけの開発なんて、ちっともテンション上がらねえ!」
部屋で黙々と、一人で作業するゲームしか愛せないんです!
困惑するアレスに構わず、そんなことをのたまっていた俺はふと気が付いた。
いや待てよ、そもそも……。
「なあ軍神アレス。──ずばり基準は? ランキング上位に入る世界って、いったいどういう世界なんだ?」
総人口か、総資産か、あるいは
アレスは答えた。
「『信仰力』だ」
「……」
「従属たちが我にどれほど信仰を抱き、我に尽くし、大地の繁栄と共にその心身を幸福で満たすことができるか」
信仰力──それは。
俺自身の知識に基づき「幸福度」と言い換えても良いんだろうか?
まあもっとも、その幸福の主語となるのが果たして住民なのか、あるいは神様なのかは分からないけれど。
分からないというか、あまり分かりたくないというか。……アレスへわざわざ確認を取るのも億劫なくらいに。
*****
俺はなんだか腑に落ちてしまった。
ヘルミオネがここへ来る前に言っていた、召喚されたら真っ先に「神殿」を作れとかいう話も、信仰力とやらが世界のランキングに影響してくるってんなら、まあ確かにそうなるよなって理解できてしまう。
まあ……理解できる、だけなんだけどな。
残念ながら、納得はできない。
アレスはおもむろに椅子から立ち上がった。赤い果実を食べ終え、アレスは手を布で拭きながら俺に提案してくるんだ。
「人間。──貴様、我の世界に来ないか」
アレスが提案してきたのは、彼が創りし
「……は、なんでそうなる? ここはアマゾン族の世界なんじゃなかったのか」
「貴様の暮らす世界でもすでに様々な種族が移っているだろう。当然だ、なぜなら人間は
アレスが明かした、さらなる真実を。
世界のことではなく──俺を召喚した創造神エイのことを。
「奴はすでに一度、人間の世界を滅ぼしている」
「…………は」
「一度であったならば
初耳だ。俺は絶句した。
創造神ビイの世界が潰れかかっているのを、俺はなんとか立て直そうと奮起していたけれど。
まさか、エイのやつ──すでに「
アレスに言わせれば、彼ら神様に三度目の正直なんてものはない。
もし再び
「『
「あ……ああ。お前ら神様の集会所みたいな空間だって…………」
「
「……………………」
「おそらく、奴にはもう後がない」
人生──『
俺は戦慄した、そして深く後悔した。
ま、まさか……俺が召喚前と同じような引きこもり生活を送っていたばっかりに、ここまでシリアスな話へ突入する羽目となってしまうなんて!
ていうか、創造神の奴!
何でそんな大事なことをずっと黙っていやがった!?
自分の未来に関わる問題なのに、市長の俺にもろもろ任せきりで、時々口出しくらいはするけれど、本当ならもっとずっと、
すると──
「貴様の話は奴からいろいろ聞いている」
「……あいつが?」
「人間の子どもにしては
「そ、そんなベタ褒めしてたんか、あいつ!?」
「であればこそだ」
だからこそ、と。
言葉尻を強めながら、アレスがもう一度同じ台詞を吐いた。
「我の世界に来ないか、人間」
*****
立ち上がったアレスが、俺に太い腕を伸ばしてくる。
「一度は罪を犯し、今もなお『信仰力』が十分に集まらないまま、人間の子どもに頼らねばまともに世界を動かせぬ愚かな神だ」
テーブル越しに求められたのは、褐色の握手。
その手はきっと、軍神への従属を誓うための……──
「我に従うのであれば、貴様にはヘルミオネと同等の権威を与えよう。人間がアマゾン族と立場を並べることができる幸福に浸るが良い」
俺はしばらく、広げられた手の平を眺めていた。
そして、顔を上げてアレスが生やした髭を笑いながら、こう言ってやるんだ。
握手を交わすためではなく、アレスの周囲に並んでいる従属たち──アマゾンたちへ指を向けるために、腕を高々と振り上げて。
「幸福? 俺とこいつらが対等? 冗談きついぜ軍神アレス」
ヘルミオネではなく、彼女以外のアマゾンたちを示して俺は言い放った。
俺自身の判断基準に基づいた、アレスが創った世界の「
「こんなに『貧しい』連中と並んだって、全然幸せになんかなれないだろうが!」
(Day.23___The Endless Game...)
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