Day.22 創造神ってそういう連中だったんだな、なるほど完全に理解した
俺はこの世界に飛ばされてから、ひとつ気がついたことがある。
神殿まで俺を案内したアマゾン族の褐色巨乳女・ヘルミオネ……に限らず、行き違った住民たち全員が褐色で、揃いも揃って胸には
そもそも、この世界には……この世界は…………!
「男のロマン、『
俺がそう叫んでやったのは、前方の豪勢な椅子に腰掛けている、この世界で初めて遭遇した男。
……もっとも見た目が男というだけであって、創造神という種族に本当に性別があるのかどうかは、無知なる
強靭な褐色の筋肉がつややかに。
立派な黒いあご髭を生やした強面の創造神──『
「──貴様が"בורא"の従属か」
アレスは椅子に肘を置き、頬杖を付きながら言語を発した。
発された「名前」こそ正確には聞き取れなかったけれど、聞き覚えのある響きだったからおそらく……。
「あんた、俺ん
いかにも偉ぶったアレスの態度に眉をひそめながら、
「早く元の
……冷静に考えたらおかしいよな。
俺ってそもそも日本から
するとアレスは、自身の椅子の脇で鎮座している何人ものアマゾンたちに、指先ひとつで指示を送る。
「こっちへ来い」
ヘルミオネが俺の腕を掴みながら、
「まずは飯だ、客人。アレス様と飯を食え」
客人を相手にしている割には結構な腕力を込めて腕を掴んでくる。
力加減がアマゾン族仕様なのか、それともヘルミオネの腕っ節が特別に強いのか。
「用意はすぐに完了する」
「い、いや……俺はさっさと帰りたいんだけど」
俺がごねようとすると、アレスが言った。
「בוראから言伝をもらっている。貴様がきたら、早急にその小さな腹を我が土地の肥やしで満たせと」
「…………」
──ち、ちくりやがった!
アレスにもヘルミオネにも促され、しぶしぶ俺は食事の席に着くことにする。
西洋絵画でしかお目にかかれない長テーブル、背もたれが長い椅子の陳列、そして王宮パーティよろしく無駄に並べられたコース料理の品々。
何十人も同時に晩餐をとれそうなテーブルに、俺とアレスの二人だけが着席した。
俺は椅子に着きながら横目で眺めた。
食事の支度をするアマゾンたち、ヘルミオネ以外の住民たち……。
彼女たちの、胸以外が激しく痩せ細っている褐色を。
*****
乾燥食品ばかり口にしていた俺が久々に摂取した、生鮮食品で作られたコース料理は美味しかった。
やたらと量が多いのは気になったけれど、一度これだけまともな食事をすれば、今日一日、いや明日の夜くらいまでは何も食べずに過ごせるんじゃないか?
……などと企んでいれば、それまで黙々と食事をしたいたアレスが、デザートの果物を手にしたあたりでようやく口を開いた。
「貴様は我々の『仕事』を知っているか」
その赤い果物は、俺がまったく知らないものだった。葡萄よりも大粒だけれど、ザクロや桃とも違う。
「我々って……お前ら神様の話か?」
「そうだ」
アレスはかつて別の世界で知り合った、機械仕掛けでカタコトだった別の創造神、ビイよりもはるかにしっかり聞き取れる声と言葉を連ねていく。
「人間もアマゾンも、貴様らは『
「『無限の天』……もしかして、宇宙のことか?」
「そうだ」
単語こそ初耳だったが、俺は不思議と腑に落ちた。
なるほど、やっぱりアレスの世界も
それに──やっぱり。
「やっぱり、お前ら創造神って……」
俺は問いかけた。
アレスに──彼が従えているアマゾンたちとほとんどよく似た
「神様という『種族』ではないんだな?」
「そうだ」
アレスは答えた、俺が以前からなんとなく察していたことを。
「我々は『無限の天』に存在する数多の生命、その終わりを迎えた肉体が神格を得て顕現している」
「要するに……生まれ変わりか」
あらゆる種族から生み出された──生まれ変わった神様。
俺は苦笑した。ファンタジーにも程がある。
まさかこの十年余りの生涯で、異世界召喚を経験するだけじゃ飽き足らず!
「人間じゃなくって、神様のほうが『異世界転生』してるのかよ……!」
神様によって俺たち人間が転生させられているんじゃなく、むしろ神様のほうが転生した後の存在だったなんて。
アレスの姿形を見るに、おそらく彼は、今まさに自身を囲っている住民たちを前世とした、元・アマゾン族の神様なんだろう。
そして以前知り合った創造神ビイは、電池を食料としている傀儡、ロボット族……と呼んで良いのかどうかは知らないが、とにかくあいつら機械仕掛けを前世としているんだろう。
そして……そして、俺をあの世界に召喚した創造神エイは!
「あいつ……やっぱり『元・人間』か!」
「我々の仕事を知っているか人間」
軽く二メートル近くありそうなアレスが、赤い果実をあぐりと頬張る。向かいの席からも果実の芳醇な香りが漂ってくる。
空になった皿を淡々とアマゾンたちが片していく、その姿にまったく目もくれないままアレスは告げた。
……たぶん。
俺をあの世界に喚んだ創造神が、ずっと黙っていたことを。
そして、創造神に喚ばれた俺が、一番知らなければいけなかったことを。
「創造神としての『使命』とも表現できる。『無限の天』に選ばれた我々の仕事は、己が前世の種族と共に『最高の世界』を創造することだ。そして最も優れた世界を創造した神こそ、この数多の星の頂点──『
…………もしかして。
いつものゲーム感覚で「都市開発」やってたけど。
リアルに都市開発舐めてたのって、創造神じゃなくて俺のほうだった!?
(Day.22___The Endless Game...)
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