Day.14 知ってる?創造神。世の中にはどんな魔法でも作れないものがあるんすよ
アルパカ族トリオが立ち去ったリビングは、いまだかつてなく暗かった。明かりの問題ではなく、空気がひたすら暗くて重い。
「……前にも言っただろ? 創造神」
重い口を開いた少年が、
「どんな
──そ、それよりも少年。
いったいどうするつもりなんだ? アルパカたちは、まるで創造神ビイの世界のことなど関心がないみたいだが……。
私の問いかけに少年は応じなかった。
黙りこくったままリビングを出ていくと、ばたばたと階段を駆け上がっていく。少年の寝室の扉が閉じられた音を、私は下の階で黙って聞いていることしかできない。
……こ……これ…………
*****
「──うん。
──ははは判断が早い!?
大木で私が事の成り行きを説明すれば、妖精アルファがあっさりと答えた。
お、追い出しちゃうのか? せっかく召喚したのに! それに、彼らがいないと例の「電池」は作れないんだよ?
「
──ドワーフは
「恋愛だって同じっしょ。だらだら付き合っててもしょうがないんだって。『あー、こいつダメだわ』って思ったらさっさと別れたほうがお互い幸せなんだよ」
木の枝にひょいと腰掛けた妖精アルファが、羽根から粉をはらはらと宙に舞わせている。
「知ってる? 創造神。食べ物も服も家も、なんなら金とか
妖精アルファは言った。
「──『
──どういうことだ、と私は聞き返す。
妖精アルファは自身の隣へやってきた別の妖精に、焼きたてのクッキーを受け取りながら言葉を続けた。
「あたしら妖精との
──そ、そうなのか? そりゃあまあ、少年はこの
「だあから、
──そ、それはそうかもしれないが……。
「でも今の
もしゃもしゃとクッキーを頬張る妖精アルファが、
「いくら『
「『
*****
──妖精アルファから鱗がはらはら落ちていくのを目にした私は、刹那のスピードで魔法陣を展開させる。
大木から目的地までは間違いなく徒歩圏内だったが、今の私にはわずか数分の移動時間すら惜しいのだ。
私が刹那で降り立ったのは──当然、少年の寝室だった。
「うわ、びびったぁっ!?」
少年は寝室でひとり、机でカップラーメンをすすっていた。
机上には地図や紙きれが散乱していて、相変わらず仕事熱心な少年である……が!
──おい、少年!
「あのなあ創造神、思春期の男部屋へノックもなしに入っていく奴はもれなく嫌われるぞ? つーか、まずはちゃんと扉から入れよ!」
──全能たる
少年のどうでもいい恨み言には耳を貸さない。
はあっ!? と仰天する少年に私は告げた。
もとより『カチク・コーポレーション』は前の世界に本社があるらしい。どのみち創造神ビイの世界と取引させるのであれば、わざわざ私たちの世界へ住まわせる必要はない!
そもそも、自分の世界ならいざ知らず、なぜ少年が
くれぐれも忘れるんじゃないぞ、従属なる少年よ。
少年はしばらくの間、私の堂々たる佇まいをぼうっと眺めてから、
「お前……俺たち人間がなかなか面と向かって言わないような恥ずかしい台詞を平然と吐くよな……さすが創造神……」
人間っつーか日本人っつーか、とよくわからないツッコミ。
カップを机に置いた少年が、頭をわしわし掻きながら、
「まあ心配すんなよ、創造神。これは一応、俺のためにやってることでもあるんだ」
──なんだって?
「どこの世界にも居るもんだよな、何もかも後手に回っちゃう創造神ビイみたいな奴が。
少年は告げた。
「どこの
市長としての、自身の「公約」を。
「俺は、そういう鈍くさい奴でも損をしない
すでに、そういう世界を知っているかのように。
少年は、がたんと椅子から力強く立ち上がる。
手にしていたのはカップではなく、蜘蛛の巣みたいに書き込みだらけな紙束。
「第二回
強い決意を胸に秘めた少年が、言い放った次の発言に今度は私が驚く番だった。
「次の会議では、妖精アルファと──創造神ビイも呼んでこい!」
(Day.14___The Endless Game...)
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