第7話 ぽかぽか喧嘩ですわ!
時は少しもどり、エムリアがお店についた頃。
店の裏手で、スバルと店長は喧嘩を続けていた。
「はぁ……はぁ……硬いなお前。攻撃はひ弱なんだけどなぁ」大男……店長は息を少し切らしていた。
「ふふっ。そっちこそ、お強いですわね!」スバルはにんまりと笑いながら返す。
石造りの壁や床は、あちこちにひびができている。スバルが店長の攻撃で吹っ飛んで叩きつけられまくったあとだった。……でもスバルの身体には傷ひとつなく、痛みも全くない。
「こんなメスガキにやられちゃあ、元『拳王』の名が廃れるってもんよ……あれ、『拳闘王』だったかな……?」
「ああ? またガキって言いましたわね……! 本気出しますわよ!」
「本気? たかが知れてんだろ、そんなちっちゃい身体で繰り出す攻撃なんて」
「むきー! ぎゃふんといわせてやりますわ!」ぷんすこしながらスバルは近くにあった身の丈ほどある木箱をよいしょよいしょと押して店長の目の前に置く。そしてその上に登り、仁王立ちする。
「ほら、攻撃してごらんなさい、ざぁこ♡」お腹の服の端を手でもち、ぴろぴろと挑発する。褐色の健康的な肌が見え隠れする。
「なんで本気出すって言って攻撃を受けようとしてるんだ……? まあいい、じゃあいかせてもらうぜ」店長は握り拳をゆっくりと腰の後ろに引き、力を溜め始める。
(あいつの痩せ我慢かもしれませんけど、たしかに私の攻撃はあまりダメージを食らってないようですわね……体重が足りないみたいですわ。ならば……こうすれば火力マシマシチョモランマになりますわ)そう、スバルは考えていた。
「真・登竜拳!!」店長は全力で踏み込んで拳を振り上げる。
今まで特大の一撃が、スバルのみぞおちを襲う。ばこんっ! その身体は軽々と宙に舞い、斜め上に吹っ飛んでいく。そして背後の壁に背中から激突しドゴン! と爆音と衝撃が巻き起こる。
そんな中、彼女はにぃと、笑みを浮かべる。
「きた! 『位置』がきましたわ! 私の最強の一撃を放てる『位置』が!」と叫ぶ。
激突した壁を、自分の両足で蹴り、更に空に飛び上がる。ぶん、と背中を反らせて空を見上げる。
「あ……? なるほどそうきたか! かっこいいじゃねえか! 来いよ、受け止めてやる!」店長は次にくる攻撃を察し、両手を広げる。
落下。店長の頭上にぶつかる寸前。スバルは思い切り反った身体を前に戻し頭を振りかぶる。
「まどもあぜる・ぐらびてぃまっくす・頭突きですわ!」
ばきんっ!! 店長の顔面に銀髪の頭が激突する。
そして、お互い逆方向に吹っ飛んだ。店長は土煙を上げながら踏んばって後ろにスライドし、スバルは後ろ向きにころころと転がりながら。
二人の顔面と頭からはしゅうう、と煙が上がっている。
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