第6話 清楚系ヒロイン登場ですわ!
カランカラン。店内に一人の少女が入ってくる。エムリア・スカレット。この地方の領主、テオドール・スカレットの一人娘だ。金髪のロングヘアーで、肌は真珠のように美しくて白い。顔立ちははっきりとしていて、数千人に一人いるかいないかの美人だった。
「らっしゃっせ〜。お、エムリア様ですやん、ちっす〜」と店番していたダークエルフの少女は右手を上げて挨拶する。
「こんにちは、ユニはいる?」エムリアは会釈をしながらたずねる。
「ああさっき……いえきてないっす」と言った後、店員はエムリアに耳打ちする。(変装してこっそりきてましたよ)と。
「あ、エムリア様。こっちこっち」フードの少女は手招きする。彼女の名はユニ・リンクス。エムリアお付きの従者のひとりで、ユニコーン娘族の末裔だ。
「なんにします〜?」と店員はメニューを差し出しながらたずねる。
「ええっとドナドナひとつと……いえ、いまダイエット中だから紅茶だけにしておくわ」お腹をさすりがらエムリアは言う。
「うぃっす〜紅茶一丁! あ、店長いないんだった……作ってきやす〜」と厨房に引っ込む。
「ところでユニ」とエムリアは静かに話しはじめる。「なんで、あなたはカフェにいるのかしら? 街で人探しをお願いしたはずだけれど?」
「う、あ、そっそのサボっているとかではなくてですね………ここで情報収集しよかなって……」人差し指をつきあわせ、しどろもどろにユニは言い訳しはじめる。
「ほんとうに?」ユニの目をまっすぐ見つめ、問いただす。
「う……すみません、さぼってました」ユニは目を伏せつつ、申し訳なさそうにする。
「正直に言ったならいいわ。まあ休憩は必要だものね」
「いやその……朝からいました……」
エムリアはだまってユニのほっぺをぎゅ、とつまむ。
「いででででて! ごめんなさい! だってどう探せばいいかわかんないんですもん! 『たくさん食べれる人』なんて! 考えてたらここに来てたんすよ」
「あらら、いたそ〜。でもちゃんと聞き込みはしてやしたよ。私に聞いてきたっすもん。食いしん坊の人はいないか〜って」もどってきた店員は助け舟を出す。
「ほい、紅茶どうぞ〜」とん、と店員はティーカップをエムリアの前におく。
「ありがとう。たしかにここなら、食いしん坊さんいるかもだけれど……」
「まあうちはおっきなドナドナが名物すからねぇ。結構食う人が集まる印象っす」
「うう、いたかったぁ……まあでも実際にみつけましたし、許してくださいよぉ」ほっぺをさすりさすり、そうユニは言う。
「そうね……あやまってるし、もういいわ。それにユニのそういうゆるいとこ、私は好きだしね。それで、その食いしん坊はどこにいるの?」とエムリアが言った瞬間、ドゴン! と店の裏口から大きな衝撃音が響く。
ちゃぷ、と衝撃の影響でティーカップから紅茶が零れる。
「きゃっ、なに!?」
「下がってください!」ユニは一瞬で立ち上がり、エムリアをかばうように背を向ける。目を紅く光らせ、角を左右に開きかけ、戦闘態勢を取る。
「えっ、あっちは店長が食いしん坊ちゃんを連れて行ったはずなんだけど……?」店員は首を傾げる。
「え? 何があってつれてかれたの?」エムリアはたずねる。かくかくしかじかで……とユニは説明する。念の為、レムリアを守りながら。
「なるほど……ユニはその時どうしてたの?」レムリアは静かにたずねる。
「ドナドナパフェ、注文してました。来て食べ終わったら見に行こうかなって」
「あっ作んの忘れてた」店員が思い出したように言う。
「ありゃま、だから来なかったのかぁ、あはは」「すまんす、あはは」
「あははじゃないわよ! そんなのあとにしなさいよ! 先に追いなさいって!」エムリアはまたユニのほっぺをぎゅうっと、今度は両方からつねる。
「いでででで! 守ってるのにつねられてる!? 飼い主に手を噛まれてる!? だってラスト一個だったんだもん!」ユニは涙目になる。
「いたそ〜。でもおかしいな、店長めがっさおこってたから食いしん坊ちゃん今ごろ涙目で謝ってるはずなんだけどなぁ……」
「でもあの音……殴られたりしてない? もしかして身体で払わせてる……?」ユニはいいながら青ざめる。
「いやいやいや、怒ってるからってそんなひどいこと……あの子、私達より年下でしたよたぶん。流石に挑発したりしなきゃ……いやあの子ならするかも……?」
「しっ」とエムリアは唇に人差し指をたて、聞き耳を立てる。「おらぁですの!」「うおりゃあ!」と食いしん坊と店長の声がかすかに聞こえてきた。どかばき、という効果音も聞こえる。「え……もしかして、食いしん坊と店長喧嘩してる?」
「いやいやそんなこと、元『拳闘王』の店長に勝てるわけが……」店員は否定する。
「とりあえず、見に行ったほうがいいですね」とユニ。エムリア「そうね、行きましょ」と同意する。
「あー直接裏口からでたら危ないかもっすね。表からぐるっと回っていきましょ。案内しやす」と店員が先導し、三人は店を出る。
「
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます