第2話 とっとと転生させろですわ!

 「まってまってまって! ほんとに生き返りそう! だめだめ!」白い服の彼女は手を掴んで止める。

 

「なんですの? てか貴様はだれですの?」

 

「神様だよ〜。へティアって呼んでね」ぱちりとウィンクしながら彼女は言う。

 

「へティア……私はあの夏海家の第一令嬢、スバルですわ! あなたよりえらいですわ、多分!」私は胸を張って腕組みをする。夏海家はかつて世界を股にかけた伝説の財閥だ。

 

「ええ……? 人が神の前でふんぞりかえってる……逆にすご……」

 

「んでそのへティア神ちゃんは私に何か御用ですの?」

  

「ええ……初対面の神をちゃん付けで呼ぶの……? いやスバルちゃんを転生させよっかなーって」

 

「てんせい……? 生き返る……ってコト!?」

 

「かんたんに言うとそうだね」

 

「じゃあとっとと生き返らせろですわ、できたらケーキ屋の前で開店前の時間でよろしくですの」

 

「注文多いね……ごめん、僕はスバルちゃんがいた世界の神様じゃないんだ……だからそれは無理かなぁ」

 

「はぁ? それじゃ限定ケーキが食べられないですわ! なんとかしやがれですの!」私はおっぱいに掴みかかる。

 

「にゃあ!? ごめんなさいっ」へティアは悲鳴を上げながら涙目になる。

 

「代わりにミルクだせですの!」ぐにぐにと両手でおっぱいをもみしだく。

 

「やだ! 女神の乳飲もうとするなんて君がはじめてだよ! 代わりに転生する時にミルク、じゃないスキルあげるから!」

 

「スキル……? それは食べられるんですの?」

 

「食べ……? いや無理かなぁ」

 

「じゃあいらねーですわ。母乳、いや神乳をよこせですわ!」

 

「やーだー! ミルク飲まれたなんて他の神に知られたら、噂になって永久に語り継がれちゃうよ! 世界の民が『やーい、お前の創造神、おっぱいすわれてやーんの』って煽られちゃうから!」じたばたとへティアは暴れる。その拍子にバランスを崩し、私共々川の中に倒れ込んでしまう。

 

 ばっしゃぁん! 水しぶきがあがり、二人ともびしょ濡れになってしまう。

 

「冷てえですわ……!」

 

「もー。スバルちゃんみたいなわけわかんない人、はじめてだよ。みんな喜んで転生するのに……」少し呆れたように

 へティアは言う。白い服がすけて、肌の色があちこち浮き出ている。

 

「私は私ですわ。……そういや転生先の世界ってへティアちゃんが創った世界ですの?」

 

「そうだよ。管理は他の神に任せてるけどね。創造神権限で他の世界で亡くなった人連れてこれるんだよ〜」

 

「ふうん。その世界にはおいしいものたくさんあります?」

 

「スバルちゃん食べるの好きだもんね、前の世界よりたくさんあるよ〜」にこにこと笑みを浮かべながらへティアは答える。

 

「じゅるり……なら転生しますわ」

 

「いいね、転生一丁はいります! あ、スキルもいる?」

 

「スキルが何か知らないですけど、もらえるならもらっときますわ!」

 

「適当だなぁ。かんたんに言うと〜空飛べるようになったり、死んでも時を戻して生き返るようになったり、特殊な事ができるようになるかんじ?」

 

「なるほど。いくらでも食べれるとかはありますの?」

 

「え、あるけど、そんなんでいいの?」へティアは呆気にとられた表情をする。

 

「かまわねーですわ」

 

「ならおまけにいろいろな効果付けとくね。食べ放題だけじゃ物足りないし」

 

「なんでもいいですの! はやく転生させてくださいまし! 腹減ってきたんですから!」わたしはぷんぷんする。

 

「せっかちだなぁ、わかったよ」ふう、とため息をついてへティアは私の肩をつかむ。

 

 ゆっくりと、顔を近づけてくる。

 

 ちゅ。女神のくちびるが私のくちびるに触れると同時に、世界が暗転した。

 

 

 

 

 

 

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