ぱくぱく令嬢の胃世界すろーらいふ!

金魚屋萌萌(紫音 萌)

第1話 クッソいてえですわ!

「くっっっっそ痛えですわ!!!」そんな断末魔が大人気ケーキショップの前、交通量の多い大通りに響き渡る。

 

 私、夏神彗(ナツガミ・スバル)は食べることが大好きなお嬢様ですわ……でしたわ、と言うのが正しいかしら。たった今、ブルドーザーにふっとばされて死にましたから。


銀髪のワイルドショートヘアーに小麦色の褐色肌。きりっとしたまんまるおめめに楕円形の眉。私は見た目もお嬢様ですわ。どやぁですわ。

 

 

「くっそぉ……限定ケーキを買うためにちょっと横断しただけなのに、なんであのクソブルドーザーはとまらないんですの? こんど見かけたら運転手を引きずり出してバチボコにぶちのめしてやりますわ!」ぷんぷんしながら私は川の真ん中を歩いていた。

 

「………ここは三途の川?」ときょろきょろ見回しながら私はつぶやく。

 

「そうだよ〜」と後ろから声をかけられて、振り向く。そこには、麗しい女性がいた。白いぴっちりした服を着て、身体のラインがはっきりとわかる。

 

 左肩から胸の間に紐が通してあり、おっぱいが強調されているのがわかる。「おいしそう……」と私はそれをわしづかみにする。

 

「ひゃんっ! 何すんのさ」びっくりした彼女は胸を押さえて後ずさる。

 

「あ、いやもちもちしてうまそーと思いまして」

 

「僕のおっぱい食べるつもりだったの!? せめて吸うならわかるけど!」

 

「……ミルク、だせますの?」じゅるり、と私はよだれを垂らす。

 

「いやだそうと思えばだせるけど……じゃなくて! 今の状況わかってる?」

 

「もちろんですわ! 多分ひき殺されたんですわよね?」

 

「え、うん。理解すごいね……だからもう君は死んでる」

 

「だったら生き返ればいいだけですわ!」私は川の真ん中で周囲をきょろきょろと見回す。左手にはお花畑が見える。右手のほうは……もやがかかってよく見えない。

 

「おいで〜」とお花畑から手を降っている人がいる。あれは……おばあさまかしら、十年ほど前に亡くなったはずの。

 

「こっちですわね!」私は迷い無く、お花畑に背を向けて歩き始める。じゃぶじゃぶと。

 

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