第4話 雪春を好き過ぎるやかんの付喪神

「またお前かニャン」

『お主は雪春殿に甘えてばかりだと申しておる、プシュー!』


 現れたのはやかんの付喪神ニャ。

 オイラと同じぐらいの背で、黄金色こがねいろのやかんのボディに手足と顔があるニャンよ。ちょっとロボっぽくてカッコいいのがオイラは気に食わないのニャ。

 せっかくの雪春とオイラの二人の、仲良しクッキングタイムが台無しニャン。


「まあまあ、二人ともそんなに睨み合わないで。あとは煮込むだけだし、お鍋はそんなに大変じゃないからね。やかん君もあとで一緒にどう? お鍋を食べない?」

『せっかくの申し出、受けるでプシュ』


 やかんの付喪神は、雪春が取れかけた取手を直し毎日のように磨いていたら魂を宿して妖怪付喪神になったニャン。

 てなわけで、このやかんの付喪神は雪春に恩義を感じてるのニャ。

 雪春のことを好き過ぎるやかんなのニャンよ。


『鍋が煮えるまで雪春殿に美味しいお茶を淹れるでプシュ』

「あ、ありがとう」

「オイラは猫舌だからいらないのニャン」

『お主には始めっから淹れるつもりはないでプシュ』

「ニャ、ニャに〜!」

「もう、二人とも仲良くして。ねっ? 僕は虎吉もやかん君も大好きだから。大好きな二人が仲良くしてくれた方がすごく嬉しいんだ」


 雪春のちょっぴり哀しそうな顔には、オイラの胸がチクリと痛むニャ。

 でも、やかんの奴にはムカつくニャン。

 だいたいやかんの付喪神にも、誰にでも優しい雪春も悪いのニャ。

 雪春には、オイラだけを特別扱いをして欲しいのニャン。


『わ、悪かったでプシュウゥゥゥ』

「うわあっ」

「なんニャ、なんニャ」


 やかんの付喪神が謝ると口から蒸気が吹き出して、調理場が真っ白な湯気で覆われたニャン!


「な、何も見えない」

「やめろニャン。分かったニャ、オイラも謝るニャンから落ち着くニャッ! ……ごめんニャン」

『ご、ごめんでプシュー。少々興奮したでプシュ』


 これが少々かニャン? まったく困った奴ニャ。

 怖ろしい攻撃だニャンね。


 しゅんっと大人しくなったやかんの付喪神は、雪春には熱々のお茶を、オイラにはぬる〜いお茶を淹れてくれたのニャン。

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