第3話 身体に染み込んだ悪魔の液体
詩織が、福岡のマンションに戻ったのは夏休みの終わる2週間前であった。
詩織は部屋に入ると荷物を置き、ベッドに横たわった。
そして、あの悪夢の1か月間を思い出そうとしたが、どうしても思い出すことができなかった。
それは、ヘ○インの効果としての記憶力の減下がもたらしていたためであった。
詩織は思った。
「何故、この鍵を握っているの?
英一は何故、『欲しくなったら…』とかコメントを記してるの?
私に一体何が起こったの?
どうして、思い出すことができないの?
健ちゃん、私を助けて…」と
そして、詩織は健人にLINEをしようとスマホを取った。
スマホ画面のLINEアプリの上には、99の赤丸数字が表示されていた。
そして、詩織は、健人のページを開くことなく、無意識のうち英一のLINEページを開いていた。
その時、あの「悪夢の絶頂」の動画画面が眼に入り込み、その画像は詩織の脳裏の奥まで稲光のように突き刺さった。
詩織はスマホを投げ捨て、泣き崩れた。
詩織は目を覚ました。
枕元の目覚まし時計は午後10時を周っていた。
詩織は泣き崩れながら寝落ちしていたのだ。
部屋のカーテンは閉めたままで、街灯の暗光のみが部屋を覆っていた。
そして、薄暗い部屋の中は、枕元の目覚まし時計のカチカチという音と冷房機と冷蔵庫が稼働中であることをアピールするブゥ~という音のみが鳴っていた。
詩織は部屋の明かりを付けることなく、バスルームに向かい、シャワーを浴びようとシャワーノブに手を掛けた。
その時であった、詩織は尿意を感じたのであった。今までこんな感覚を感じたことはなかった。
詩織はそのまま尿を垂らした。
そして、シャワーノブを回し、身体を洗った。
シャワーを浴びた後、詩織は身体を拭きもせず、そのまま全裸でベットに向かった。
その時、詩織の意識は、恰も隠しカメラで自分を覗いている変質者のような気分であった。
詩織は全裸のままベットに横たわり、スマホを左手で握り、LINEの英一のページを開き、あの「悪夢の絶頂」動画を再生した。
そして、それを観ながら、詩織はひっくり返ったカエルのように両股を開き、そして、右手を陰部に向かわせ、人差し指で陰部の小さな豆を弾くように捏ね始め、段々とその捏ねる速度を加速し、喘ぎ声を上げながら、仰け反り、絶頂に達し、ベットの上で2、3回バウンドした後、股を開いたまま、ビクビクと痙攣した。
痙攣が治ると、詩織はまた、あの「悪夢の絶頂」動画を再生し、今度は、人差し指で小豆を、中指でその下の白濁の液を溢れ返している穴に挿入し、小豆と共に激しく捏ねくり回すのだった。
そして、「悪夢の絶頂」動画の中の自分と同じように、仰け反り返り、バウンドと痙攣を繰り返した。
その喘ぎ声はけたたましく、マンション中に響き渡った。
そう、英一の詩織に施した調教は、しっかりと詩織の身体に根付いていたのだ。
この「悪夢の絶頂」を行い続けることによって、英一が、あの悪魔の液体、ヘ○インを注入してくれることを詩織の身体はしっかりと覚えていたのであった。
その夜から詩織の蛮行は1週間開催された。
マンションの住民達は変な噂を立てるようになった。
「あの部屋の人、おかしくない! 変な声上げて! 変な薬か何かしてるんじゃない!」と
1週間後、詩織はやっと認識した。
自分の身体が普通でないことを、
英一が自分に何をしたのか、あの英一のコメント、「欲しくなったらいつでもおいでよ」という意味が、
詩織はスマホで薬物依存症を調べた。
ヘ○イン、コ○イン、大麻、MDMA、LSD、覚せい剤などを調べ上げ、そして、左腕の注射痕を眺めた。
そして、詩織は思った。
「まさか、私はヘ○インを入れられたの?」と
ヘ○イン症状を紹介する警察のwebサイトにはこう記されていた。
「ヘ○インは、化学的加工によりモルヒネから製造される白色又は茶色い結晶性粉末で無臭、水によく溶ける苦味のある物質です。
身体的な依存性はモルヒネの10倍と非常に高く、精神的な依存も存在し、他の如何なる麻薬よりも依存性が早くできあがります。
ヘロインを摂取すると、最初は多幸感を得られますが、その後は気怠い感覚や悪心、嘔吐、涎を垂すなどの症状が始まります。
大量に摂取すると、呼吸が浅く、遅くなり、ひきつけなどを起こしたり、こん睡状態から死へ至ることもあります。」と
詩織はヘ○イン症状の「涎を垂す」に目が止まったのだ。
最近、無意識の内に口から涎が流れていることが多々あることを気に留めていたからだ。
そして、ウェブを読み続けた。
「ヘロインにおいてもっとも恐ろしいのは、その禁断症状です。
薬の効果が切れると、筋肉に激痛が走り、関節がきしむように感じます。
また、皮膚には鳥肌がたち、震えが起こり、そのうえ下痢を繰り返すようになります。
禁断症状が進むと、異常な興奮や、全身の痙攣、失神等を起こすようになったり、自分の手の指にかみつく等の自害行為におよぶこともあります。」
詩織はそのwebを読み終えた。
詩織のスマホを握る左手は恐怖で震えていた。
握られていたスマホは、手の震えにより、その画面を上下左右と回転させていた。
詩織には、幸い、今のところ、ヘ○インの禁断症状は出ていなかった。
だが、詩織には分かっていた。
「欲しくなったらいつでもおいでよ。」と記された英一のLINEのコメントからして、
ヘ○インの禁断症状が自分に襲いかかって来るのには、そう時間を要しないことを
詩織は決断した。
「禁断症状が出る前に、ここを出ないと。
もう、ここに居るわけにはいかない。
早く熊本に帰らないといけない。」と
そして、スマホのLINEの健人のページを開き、何か書こうとしたが、何も書くことが出来なかった。
詩織はLINEの健人のアイコン写真を見つめこう呟いた。
「健ちゃん、ごめんね。もう逢えなくなっちゃったよ~、健ちゃん、ごめんね~」と
詩織の目から涙が溢れ出し、一筋の涙が頬を蔦わり、顎からポトリ、ポトリと音を立てることなく、ベットシーツに零れ、その落ちたシーツの箇所をじんわりと滲ませていった。
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