その7-03
なんだか、大曽根の口元が曲がっているように見えるが、またもにこりとアイラに笑ってみせて、
「でも、やっぱり藤波君が一緒にいる方がいいだろう」
「なに? この男、生徒会長さんからも信頼されてるわけ? 胡散臭い割には、腕が立つの?」
「それは俺も知らないけど、でも、いざという時は盾になるくらいはできると思うしね」
「ああ、そう。だったら、さっさと盾にして置き去ればいいのね」
「そう――言うんでも、ないんだけど」
商談は成立したようだったが、どうも、大曽根の権限――というか立場は確立されていないようだ。このアイラを相手にしていると、大曽根の方が言いなりになっている気分である。
「――君も、なかなか手強いねぇ」
「男の扱いは慣れてるのよ。エゴがデカイものねぇ」
「ああ――そうですか。深く、追求もしないし、否定もしないけどねぇ」
「話が決まったんなら、さっさと行くわよ。仕事前に、もう一つのアテの所に寄らないといけないの」
「行きましょう、って言えないの? 偉そうだ」
ふん、とアイラは軽く鼻でそれを笑い飛ばし、
「私が高飛車だって言いたいの?その程度でへこたれる男なんか、相手にしてないのよね。男にも困ってないしぃ」
「それも、否定はしないけど」
「じろじろ見ないでよ」
「見てないよ」
「見てるじゃない」
「まあま、痴話げんかなら外出てからやってもらいたいな。俺はそっちの方の仲裁はしないことにしているんだ」
「誰が、痴話げんか?」
「君達二人が、ね。だから、もう帰っていいよ」
あからさまに、さっさと帰れ、状態で追い出されて、アイラのシーンと無表情の冷たい視線が大曽根を射りつける。
スッ、と大曽根は自分の手を顔にかざすようにした。
「ああ、君の視線は攻撃的で、繊細な僕には毒だよ……。あぁ…」
「うそ臭いのよ」
それだけを冷たく言い捨てて、スクッとアイラは椅子から立ち上がった。その高圧的な眼差しだけで、廉に向かって、さっさと立て、と言いつけている。
この目だけで他人を――一介の女の子が命令してくるのだから、ものすごい性格であるし、態度であるし、根性でもある。
「生徒会長、この貸しは高くつきますよ」
廉はスッと立ち上がり、仕方なく動き出した。
アイラが先にドアを開けて部屋を出て行き、廉がその後をついて行く。
「げえぇ、藤波に貸し作っちゃった。絶対、高そうだ」
「確かに。俺は一抜けた」
「なにを?」
「抜けたから、会長が責任取れよ。――さあ、仕事が残ってるな。他の奴らも呼び戻さないといけないし」
去り際も颯爽と華麗に、井柳院は大曽根に反撃する隙も与えずに室内から出て行ってしまったのだった。
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