第2話 ミルクのないコーヒー
「お前コーヒー飲めないの?子供だなぁ。」
「うるさい!高校生はまだ子供だもん。それにミルク入れれば飲めるし!」
部活の差し入れで保護者から貰った、手違いで買ったというブラックコーヒーを片手に茜と健太は言い争いをする。
甘いものが好きな茜。ブラックコーヒーなんてとても飲めるはずはなく、開けることすらしなかった。それに気付いた健太にちょっかいを出される。
「また先輩達いつものやってるよ。喧嘩するほど仲が良いって言うしな。」
陸上部の後輩達は見慣れた二人の光景を笑い合う。
大きな大会も終わり、3年生は引退している時期だが、すでに大学の推薦が決まっていた二人はちょくちょく陸上部に顔を出していた。
「はいはい、いつもの強がりね。」
「そうやっていつもからかうんだから!もー。」
茜はコーヒーを飲まずカバンにしまう。
二人は高校3年生の10月から付き合い始めた。
学校帰りにカフェに寄り道したり、買い物したり、純情な関係を続けていた。
まだ手を繋いだことも、キスをしたこともない。
奥手な健太が女の子をリードをするのはとても難しい事だった。
「じゃあそろそろ帰るか。」
「そうだね。みんなの練習の邪魔しちゃいけないからね。じゃ、みんな練習頑張ってね!」
「はい!また遊びに来てくださいね。」
いつもの帰り道を通り、二人並んで歩く。
「そういえば茜がいく大学の入学式っていつだっけ?」
「えーと、確か4月3日だったかなー。健太はいつ?」
「俺は4月1日。俺の方が早いね。」
「そうなんだ。あと1ヶ月と少しかぁ。高校生活ともおさらばだね。」
「そうだな。あっという間だったな。」
…
いつもより会話が続かない。健太は少し緊張してるみたいだった。
「俺たち、4月から別の学校で今より会えなくなるけど、こうしてまた会おう。」
「うん。そうだね。今みたいにすぐに会えなくなるもんね。」
…
「俺、これからも茜だけを好きでいるから。」
こんなにストレートに言われたのは初めてだった。茜は恥ずかしくなり、健太の真っ直ぐ向けてくる視線をそらす。
健太は茜の肩を強く掴み、突然唇にキスをした。
驚いた茜は、健太の顔を両手でグッと押し走ってその場を離れた。
健太との初めてのキスは、苦いコーヒーの味がした。
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