二杯目 スパーリングワインとホットドック
目が痛い。
一日の仕事をやり終えると大概、もう何もみたくなくなる。
それは半日でも同じだ。
人手不足で、休みは買い取られることが多々ある。さすがにこれ以上、仕事は出来ないと午後から休みをもらったが、それでも残業をした。一時すぎた。
まだ日は高い。
郵便局の仕事は、ひたすらにノルマとの闘いだ。
部署にそれぞれにあるノルマは全員を縛るも。
ひたすらに売り上げを月はじめから気にするのは胃に悪い。
男である雄吾は外回りが主だが業務はルーティンでまわるからそのうちまたあのめんどくさい受付を担当する日がある。すぐにキレるような客がきたらどうしようと思うと受付の仕事なんて怖くて怖くてたまらない。
わりと人は簡単にキレるし、ちょっともたつくと行列ができる。あれは悪夢だ。
毎日毎日、仕事は終わらせる方式なので明日へ、は通じない。時間はまってくれない。人がいない。仕事に圧迫されていく。
荷物のふりわけは機械では出来ないため、ひたすらに人の手を使う。
読みづらいものや解読不可能なものをおいといてひたすらに振り分けて、ようやく自由の身になると、肉体のエネルギーがすべて搾り取られたような感覚に陥る。
しおしおと勤務先を出て、そのままふらふらとした足取りで歩いていくと、太陽の眩しい日差しが気持ちいいのに、同時にうとましくも思えた。
そろそろ夏だ。
夏になるともっと大変だ。体力的にもだが、配達の仕事をしていたらたとえバイクでも汗だくになる。脱水
コンビニが目についたのに、飛び込んだのは疲れていたし、ごはんをどうするのか考えるのが面倒だったからだ。
スパーリングワインの小さな瓶が目について、手にとったのはやっぱり疲れていたのだろう。
脳みそが考えることを拒絶した。
それらを袋にいれてもらった。
どうしようかと考えて自転車にまたがり、そこから数キロ離れた土手に向かった。
大きな川とその近くに作られた子供向けの遊具と春は桜がきれいな木々と憩いの広場がある。
今日は平日で人はいない。
これはいいと、ベンチに腰掛ける。
日差しを受けながらあたためてもらったホットドックを取り出してかぶりつく。ケチャップが甘い。からしがぴりっとくる。
ぽりぽりとする肉とキャベツのしゃきしゃき。
りんご味のピンク色のスパーリングワイン。ちょっと男の雄吾が手にとるのは躊躇ったそれの蓋をあけて口つける。
じゅわわっとした甘さ。
アルコール度はたいしてない。けど疲れていたせいでくらりとくる。
もう一口飲むと、甘すぎない味が舌に広がり、炭酸が喉を焼く。
そのままホットドックをかぶりつく。
こういうとき、ビールだろう。
脳内でつっこむ。
そんなことも考えつかなかった。
けど、まぁ、これは、これで意外と合うじゃん。
ホットドックを大口で食べつくして、ケチャップを舌で嘗めて、ワインを飲み切る。瓶の底まで飲み切ると、林檎の酸味が舌のうえで踊った。
家に帰ったらとりあえず寝よう。
明日も仕事なんだし。
酔っぱらって自転車には乗れないが、特に予定もない午後を満喫するためにも、のんびりと歩いて帰る。
このまま家に帰って少し休んで、さて、なにをしよう。
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