本当の家族

 私は、この家族に不似合いだ。

 ここに居場所がないとつくづく感じる。決して家族にいじめられたわけではない。むしろ、家族はみんな私に対して優しかった。笑顔でほしいものを与えてくれた。

 恵まれすぎている。


 私は悲しいくらいものを壊すことが好きだ。玩具も、服も、気に入ったものをどんどん壊していく。

 そうすると心が落ち着く。

 安心する。

 居場所がないという恐怖心すら吹っ飛んでゆく。


 いつから

 どうして

 いつのまに


 気が付いたらものを壊す癖がついていた。大切であれば大切なほど壊すのが怖くて、安心する。

 それは生き物でも。


 ペット。

 可愛がっていた野良猫。

 そのあとは


 私は同級生の友達。こんなわたしを友達として支えてくれた、理解してくれた友達。

迷ったあと、電車に突き飛ばした。ぐちゃぐちゃに壊れた友達を見たとき、なぜかほっとした。


 ただそんなことがあってから家族は引っ越しを余儀なくされた。私がこんな性格で、ものを壊してしまうから。

 申し訳ないと思う反面、知らない人のところにいけるのに心が躍った。

 新しい環境。

 知らない人たち

 そこでまた得る。壊す。ああ、たのしみだ。


「おいで」

 と言われて私は家族を探す。どこだ?

「こっちこっち」

 誘う声に導かれていくと。そこは地下だ。引っ越しをするとき、こんなところがあるとは聞いていなかった。

 私は恐る恐る、階段を降りて地下へと向かう。

 暗い階段を降りた先には家族が集まり、微笑んでいた。

 そこにはあらゆる道具があった。

 ノコギリ、はさみ、椅子、ハンマー、電気……これは


「お前の部屋だ」

「へや?」

「ものを壊せるように、お前も十五歳だもんな。もう警察に厄介になっちゃうからさ」

「家族の本当を教えないとね」

 父も、母も、姉もそんなことを笑顔で告げる。

 私の肩をとって

「さぁ、好きなだけ壊しなさい。けれど世間ではちゃんと隠さなくちゃ、もう子供ではないんだよ」

 その言葉で理解する。

 ああ、この家族はまごうことなき、私の血を通わせた人たちだ。

 彼らの手にはハンマーが、包丁が、ナイフで。そして、もう片方の手には壊したらしい何かがある。

 あれは、飼っていた犬だったのか。それとも、挨拶してきてくれたお隣さんか


 私たち家族の本当になれる部屋。それがこの部屋だ。

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