贅沢な復讐
目が覚めた。とってもいい温度。
私はそのままシャワー室に向かい、無造作にひねり出したあたたかい湯で体を洗う。
今日は何を食べよう、そう思っていたらマザーが「サラダを用意しましたよ」と伝えてくる。はーい、私は返事をする。選択権はなしかー。
無機質な鉄の部屋。最新の技術を集めて作られた部屋。パパ、科学者なんだ。それで、パパは世界一安全な家を作った。どんな攻撃も、どんなことをしても壊れない頑丈さ。
マザーっていう世話をしてくれるロボットも作ったくれた。マザーは丸っこい鉄がくっついて出来たような見た目だけど、世話焼きさんであれこれと声をかけてくる。私はいちいちマザーの言われた通りに動くだけ。考えることもない。
今日のごはんはシーザーサラダ。いっぱいのドレッシングをかけてわたしは頬張る。
テレビつけてもいい? マザー
「行儀の悪い!」
といいながらマザーは甘いからテレビをつけてくれる。
どーんと火があがる。警告、警告、お前たちのデモをただちに――ノイズ――食べ物をくれ、もう死んでしまう――ノイズ――世界では第三次世界大戦で――ノイズ――科学者ノルンが作り出した最新の防壁と安全を約束した家が崩壊――博士自身も――ノイズ。
いつもと変わらないテレビ。
パパは口にしていた。そのうち、世界が戦争を起きて、みんな死ぬけど、お前だけは生きていてほしい。
まず、食べ物がなくなるんだって。けど、この家のなかは勝手に科学の力で食べ物を作ってくれるし、普通のパンや野菜もお肉も食べられる。
パパは口にしていた。
安全で平和な世界。
目指していたけど、みんなパパの発明を戦うことしにか使わないし、それをとりあって殺し合いをするから、完璧なものは一つしか作らないんだって。
私がいるこの家以外はみんな欠陥品。
パパ、私一人だけ生き残らせてどうするのよ。もう
私はパパのちょっと間抜けさを笑いながらシーザーサラダにドレッシングをいっぱいかける。
テレビでは、また飢えた人たちの怨嗟が聞こえる。
罪悪感はある。
けど、あんたたちはパパを殺したでしょ。だから私は食べるんだ。これは復讐。私は生きて、いっぱい水を使い、食べ物を食べる。贅沢をする。あなたたちが私のパパを奪った結果よ。
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