第33話 五人でコンテニュー?
「私は、やっていけると思います」
ミライさんは続きをうながすように相づちを打つ。
「まず、恋愛的なところは問題ないです。確かに私の元パートナー、私のことが好きだった友達、私の現パートナーが揃っているのはよくよく考えれば火種のような気もしますけど、朔空と私はお互いに未練はないですし、莉緒だってそう。愛生は現パートナーですから何の問題もないですよね」
「そう、華恋は恋愛的な問題はないと思ってるのね」
ミライさんが確認し、私はうなずく。
「問題があるとしたら朔空の『不純な理由』とやらですけど。さっきも言った通り私は気にしないし、莉緒も多少思うところがあったとしても、それで自分からぶつかりに行くようなタイプじゃないですし。愛生はクィア研究に思い入れが強いからそんな理由の人がいるのは面白くないんでしょうけど、なんだかんだ朔空は真面目で空気が読めるやつなので、自然とわだかまりは消えるんじゃないですかね」
それで言うと、朔空があの場でわざわざ『不純な理由』などという、明らかに揉め事になりそうな言葉を使ったのがらしくなくて気にはなった。
とはいえ、私たちに比べれば強い思い入れがないという謙遜の意味だったのかもしれない。
「そう。とにかく、華恋は五人でやっていけると思うし、五人でやることに反対ということはないのね?」
「はい」
私が肯定すると、ミライさんはその答えを脳内に刻み込むように何度かうなずいた。
「わかりました。聞きたかったことは以上です」
◇ ◇ ◇
ミライさんとの個人面談が終わり、自分の席に戻る。そして私と入れ違いに莉緒が個別相談室へと向かう姿を見送りながらも考える。
愛生や朔空、そして莉緒の、あの質問への回答は何だろう。私は『やっていける』と答えたけれど、みんなも同じだろうか。ミライさんは『本人の意向を尊重する』と言っていたけれど、それは一人でも『無理だ』と答えたらそちらを優先するということだろうか。
愛生はどうなのだろう。念願叶ってついにミライさんのもとでクィア研究が出来ることになった。それを多少面白くないことがあったからと言って台無しにするだろうか。そう考えると、なんとなくだが、愛生は『我慢する』と答えるような気がする。
朔空はどうかと言うと、恐らくは『やっていける』と言いそうな気がする。少なくとも自分のせいでチームが解散するような選択をするとは思えないし、そうならないように奔走する方を選ぶだろう。であればこそ、本当に『不純な理由』などという言葉はミスチョイスだったと言わざるを得ないと思うが。
そして、今まさにミライさんとその話をしているであろう莉緒は、超が付くほどの平和主義者だ。
以上を踏まえると、恐らくは当初の予定通り五人でやっていきましょう、となるはずだ。
私はそう結論付けて、改めて読みかけの本のページを開くのだった。
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