『forget-her-not』
『百合の少女の宝物』
「魔女様おはよー!」
私は今日も元気よくドアをノックして、魔女様のお家に入る。
「おはようございます、魔女様」
「あら、おはよう。貴女達も飽きないわね」
私に続いて入ってきたレイナも声をかけて、魔女様はあくび混じりの「おはよう」を返してくれる。
これが私達のいつも通り。
そして、
「魔女様は今起きたんですか?」
「私、朝は弱いのよ」
魔女様は可愛い寝癖を手で梳きながらレイナに答えた。
「じゃあ私が寝癖直してあげるね」
「……そうね。たまにはお願いしようかしら」
「やった!」
私は魔女様が座っているベッドの横に置いてあったブラシを取って、魔女様の白い髪に当てる。
窓からの光を浴びてキラキラしてる、さらさらの髪。
大好きな魔女様の髪を整えていると、自然と頬が緩んじゃう。
「リリー嬉しそうだね」
「へへぇ。だって魔女様がやっと寝癖直させてくれたんだもん」
「……今日だけよ」
なんだか恥ずかしそうに顔をそらした魔女様がとっても可愛い。
レイナも私と同じことを思ったみたいで、魔女様を見ながらニコニコしてる。
「えー、またやらせてよ」
「そうね。……もし今日上手く直せたら、次も考えてあげる。……その方が私も楽だし」
「魔女様って意外と面倒くさがりですよね」
レイナが苦笑いをしなが言った。私もそう思う。
物取る時とかよく魔法で取ってるし。
けど私にとっては、そんなことより今魔女様の寝癖を直すことの方が大事だ。
だって明日からもこの寝癖を直せる権利がかかってるんだから!
「魔女様の髪って編み込むの結構時間かかるよね」
「今まではブラシに魔法をかけて朝食を取りながら直してたからあまり気にしてなかったけど、……言われてみればそうね」
「便利ですね、魔法……」
私も魔法が使えたら、ご飯食べるときはスプーンに魔法かけて食べるのに……。
しばらくお話をしながら、やっと魔女様の髪のセットが終わった。
私としてはすごくいい出来だと思う。
「どう?」
私が聞くと、魔女様はおっきな姿見の前に立ってくるりと回る。
「悪くないんじゃないかしら」
「やったぁ! じゃあ次からもしていい?」
「……約束したものね」
「よかったね、リリー」
優しいレイナと、大好きな魔女様。二人と過ごすこんな時間が、私の一番の宝物。
「ねぇ、今日は何する?」
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