第7話

「スバルホームズの方ですね。社長がお待ちしております。どうぞこちらへ」


 エントランスホールの受付の女性に案内されて高層ビルの最上階に案内される。新しい会社だが非常にいい立地に社を置いているのを見ていかにこの会社が急成長しているかが見て取れる。米原はガラス張りのエレベーターの中でどんどん離れていく地上をじっと眺めていた。小鳥遊は軽く息を吐く。目を閉じて心を整えた。


宇津木うつぎ社長。スバルホームズ様の小鳥遊様がいらっしゃいました」


 扉の奥から入れという低い声が聞こえた。すぐに事務員が扉を開ける。小鳥遊はゆっくりと会議室に足を踏み入れた。


 宇津木社長の他にキジマ鉄鋼の本部長と営業部の葉山はやまが既に席についていた。葉山とは初回から顔を合わせているので少し緊張がほぐれる。葉山はユーモアのセンスに長けており、会議中も煮詰まった際には気の利いた話題を振ってくれるのが常だった。


 席の真ん中に座る社長に近づき一礼する。米原は右斜め後ろに立った。


「この度は宇津木社長自らこちらの話をお聞きになるということで、課長から強く肩を叩かれて参りました。小鳥遊と申します」


 丁寧に名刺を受け渡す。無骨で肉のついた指が力強く名刺を引っ張っていった。ついで本部長、葉山の順で名刺を渡していく。


 宇津木社長はまだ30代の若手社長だが、高校を卒業後建築会社に勤め現場を深く知り、自ら鳶職として働いてきた異色の経歴を持つ人物だった。現場第一を掲げる理由には社員の安全と安心を考慮する慈愛の念がうかがえる。


 用意された向かいの席に腰をかける。米原は資料を3人の手元に置くと、ゆるやかな足取りでこちらの席に戻ってくる。緊迫した空気を一新するように葉山が言葉を発した。

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