第2話 新しい関係

 君とまた会えるかなと不安に思ったのは杞憂だった。

 君は僕を気に入ってくれたのか、ほぼ毎日僕の家に来るようになった。色っぽいことをするでもなく、働き者の君は僕のベッドで眠っていた。

 僕はただそっと君の頭を撫でていた。


 話を聞いてみると、家にいることが嫌で、家族が嫌いで、家にいないで済むように働きづめに仕事を詰め込んでいたらしかった。

 それを聞いて、心配になった。

 何かしてあげたくなった。

 けれど、話を聞くくらいしか出来なくて、そんな自分が歯痒かった。

 キスはしたけれど、僕たちは友達だった。あの日までは。


 僕には遠距離恋愛の彼女がいた。が、自然消滅してしまっていた。少なくとも僕はそう思っていた。

 いつものように君が僕のところに来ていたら、突然彼女から電話がかかってきた。その内容は“別れ話”だった。とっくに終わっていたと思っていた恋は、二度も終わりを告げられた。


 僕は泣いた。

 泣いていた僕を君が慰めてくれた。

 君がいてくれて、本当によかったと思った瞬間だった。

 君が僕に“付き合おう”と提案した。僕はその言葉に頷き、僕たちは友達から恋人になった。

 恋人期間は短く僕は君に結婚しないと別れると迫られ、付き合ってわずか3ヶ月で夫婦となった。


 やっぱり君の家庭はおかしかった。

 あらかじめ、君は母親に僕の食べれない食べ物を伝えてくれていた。そうしたら、結婚の挨拶のとき、僕の嫌いなものがフルコースで出てきた。僕はそれに耐え、完食した。君はものすごくそのことを怒っていた。これが好き嫌いではなく、アレルギーだったら大変なことになっていたに違いない、殺人未遂だとかなり怒っていた。

 おかしかったのはそれだけではない。僕はスーツを着て挨拶に行ったのだが、君の父親はスウェット姿でソファーに横になったまま、結婚の話をした。

 反対する理由がないから、好きにすればいいとどこか突き放す言葉を僕は投げつけられた。


 君はちゃんと働けと言われていた。だが、君はこのとき過労死するんじゃないだろうかと思う程働いていて、疲れて僕のところで眠っていたのを知っていたから、その言葉に腹を立てていた。

 母親には結婚は裏切りだ、家を捨てる行為だと罵られていた。二度と帰って来てくるなと絶縁もされていた。

 君が可哀想だった。

 僕が守ってあげなきゃと決心した。


 両家顔合わせはいつがいいか聞いたら必要ないと言い切られ、両家が顔を会わすことなく、結婚が決まった。

 僕のほうの挨拶は特に問題はなかった。


 少しずつ話を聞いていくと、君はやはり家庭に問題があるようだった。虐待をされており、お金もとられていた。

 病院も無駄遣いだと言われるため、声が出なくなったことも仮病扱いされ、診察がかなり遅れたらしい。


 まずはちゃんと君を病院に通わせてあげようと僕は心に決めたのだった。 

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