第3話 身体の関係
君が言うには、僕は性欲が強くないらしい。
言われてみれば、今まで彼女がいたけれどそういう行為はおろか、キスすらしたことがなかった。僕は彼女よりもバイクに夢中で、どちらかを選ぶならバイクを選ぶ人間だった。
初めてのキスは君とだった。
初めてのセックスも君とだった。
君がちょっと強引だったから少しだけ怖かったというのはここだけの話。
手慣れていたから、君はこういう行為が好きなんだと思っていた。だが、すぐにそれが間違いだったことを思い知らされた。
したいと思って君を誘う。でも、君は首を横に振り逃げてしまう。
それで喧嘩になる。
教えてくれたのは君なのに。
君が好きだからしたいのに。
こんな思いをするなら最初から教えてくれなければ良かったのに。
泣いていたら、君は理由を教えてくれた。
結婚の話をしてた彼氏にしていてつまらないとフラレたこと。
身体ばかりを求められて、デートらしいデートをしなかった男がいたこと。
初めて付き合った彼氏に突然理由も言われずフラレて、好きな気持ちが消えなくてセフレになって、妊娠を望んで何回も泣いたこと。
詐欺にあい、男に逃げられ、貯金は奪われ、借金を背負い、風俗で働いていたこと。
昔、レイプ未遂にあったこと。
あぁ、なんでこんなにも君は傷つけられているんだろう。
聞いている僕のほうが泣きそうになっていた。
喧嘩をした後にだけ、君は身体を委ねてきた。
それが僕に対する機嫌取りであるのは明白で、悲しくて、寂しかった。
君も僕も愛情を欲していた。
でも、お互いにどうすれば良いかわからなかった。
君は虐待を受けていた。
僕も虐待ーーネグレクトを受けていた。
僕は精神的に持たなくて仕事をやめた。
そして君はまた風俗を始めた。
思えばここが始まりだったかもしれない。
これから僕は仕事が続かなくなり、働けなくなっていくことになる。
過労がたたってか、君は突然寝たきりになった。
ずっと布団に横になっていた。
この頃はもうお金に追い詰められていた。
君は僕にお金の話をした。でも、そんなことを言われても僕にはわからなかった。
だから“関係ない”と言っていた。
それが酷く君を傷つけることになるとは気づきもしないで。
そして、動けるようになった君は僕を置いて出ていった。
引き止めた僕に君は“嫌い”と言葉を突きつけた。
風俗で働くのを止めて欲しかったのにと責めた。
止めたかったよ。
電話がかかってきて仕事に行く君をどんなに止めたかったか。
平気なんかじゃなかったよ。
ずっと泣いて帰りを待っていたんだ。
置いていかないで。
僕はもう君がいないとダメなんだーー。
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