再び出会えた、大切な家族

「It die Shetr wtn? Wi Se enn Fhe gmct hbn? E it ky, Shetr. Die Shetr mct i nct enn Fhe. Ih bn enah gwe, zr rctgn Fgr fr mc【お姉ちゃん、怒ってるの? 間違えたから? 大丈夫だよ、お姉ちゃん。お姉ちゃんは何にも、間違えてなんてないよ。私は、私に相応しい姿に、なっただけだもの】」


妹の声音に、変化はない。アリシアは影を真っ直ぐに見て、告げた。


「私は、そんな姿が相応しいなんて、思ったことはないわ」


部屋の中に、静寂が訪れる。アリシアは、妹が何かを言うまで、黙って待っていた。やがて、妹の戸惑ったような声が聞こえてくる。


「[  ]Wrn lg ds? Mie Shetr sge, se mg mc nct. Ih lg mc imr mt im a, ud de adr Pre ht e nct gtn. Ae wrm?[    ]E it slsm, ih hb mt mie Shetr gsrce, ud e shit wrlc en Pro z si. Mie Shetr wr mc hse. Ih bn mr sce, ds d wtn wre wrt. Ih knt e nct de gne Zi sgn. Ih wlt en Fmle mt mir Shetr si. Sh shn, sh snt, mie soz Shetr[  ]【……どうして、なのかな。お姉ちゃんは、私のこと、嫌いだって言ってたのに。いつもいじわるで、相手もしてくれなくて。なのに、どうして。…………不思議なんだよ、お姉ちゃんと話してたらね、本当に人になったみたいで。お姉ちゃんにはね、きっと嫌われるからって。きっと、怒られるからって。ずっと、言えなかったけど。私はね、お姉ちゃんと、家族になりたかったんだ。とっても綺麗で、とっても優しい、私の自慢のお姉ちゃんと……】」


それは、アリシアが初めて聞く、妹の本音だった。自らが傷ついていることにすら、気付いていない妹。彼女に今、届く言葉は何なのか。きっとそれは、励ましでも、同情でもない。アリシアは、内心の怒りを抑えて、口を開いた。


「あら。あなたは、ただ、才能があるというだけの人間でしょう。そんなところで、そんな姿で、いつまで、そうしているつもり? 私は、あなたと手を繫いで歩きたいの。はやく、戻ってきてちょうだい」


あの頃のアリシアを、自慢だったと言ってくれる。そんな妹に、届く言葉。それは、自信と誇りに満ちた、アリシアらしい言葉だと考えて。声が震えないように、笑みが曇らないように。姉として、断言する。部屋に再び、静寂が訪れた。アリシアは、机に付けたままにしていた右の手を離した。そして、手のひらを上にして、影の方に指先を向ける。招くような、差し出すような、その手に。妹の手が、そっと乗せられた。細い、枯れ木のような手ではない。可憐な、人の指先が。アリシアは、華やかに微笑みかけた。


「そうよ。それでいいの。ねえ、エミリー。私と一緒に、生きてくれる?」


「……きっと、迷惑だよ。今でも、酷いこと、いっぱい言われてるのに。私が一緒にいたら、もっと言われちゃうよ。せっかく、お城に上がれるようになったのに。せっかく、認められるように、なってきたのに。全部、無駄になるかもしれないんだよ。お姉ちゃんは、それでいいの?」


人の言葉。人の姿。それを取り戻すことが、最も難しいと思っていた。けれどきっと、妹はとっくに、元に戻る方法を知っていたのだろう。


「馬鹿ね、エミリー。私は、あなたに会いたくて、ここまで来たのよ? 無駄じゃないわ。だって私の願いは、もう叶ったもの」


水から手を出して、乾いた布で拭く。振り返ると、人に戻った妹が、俯いた状態で立っていた。


「……ほんとに、変なの。後悔するよ、きっと」


アリシアは立ち上がって、妹の方に向かう。


「そうかしら? 私は、後悔なんて、しない自信があるわ」


そう告げて、妹の手を取る。力の入っていない、華奢な手。ようやく取り戻すことができた、大切な宝物エミリーが、そこにいた。

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