ズルいズルいズルいズルいズルいズルい
希華が乃寧たちの告白現場を目撃しようと後をつけているのは行動で察した。
それは本人の自由だし、僕には関係はない。
『おい主将がコクりに行ったらしいから校舎裏見に行こうぜ』
『だなっ。あのイケメンが振られるところ見てみたいし』
『おまっ、それ酷すぎじゃねww』
教室に入ろうとした時、すれ違いで廊下を歩く生徒の会話が耳に入った。彼らはサッカー部の部員。仲間の告白のが気になるのは分かる。
それも僕には関係ない。
一回は無視した。
だが、席着いてハッとした。
もし、希華がサッカー部の男子たちと鉢合わせたりでもしたら……。
そう思ったら、駆け足で追いかけていた。
「あのっ、あり……」
言葉が聞こえ、後ろに視線をやった時には、彼女の身体が傾いていた。咄嗟に抱き止める。
「おっと、大丈夫?」
抱き止めて気づく。
触って大丈夫だったかな……? 確か希華は男性恐怖症だと聞いたことが……。
顔を覗き込むも、そのまま気を失ったようだ。運が良かった。
「早く保健室にでも連れて行かないと……」
気を失っている希華を僕が抱き止めている。下手したら勘違いされてしまう。
希華を背中に背負おうとした時だった。
「……希華?」
「っ!」
背後から声。振り返ると乃寧がいた。
男子たちは先に立ち去り、この場には僕しかいない。証言者の乃寧は眠っているし……
これは……ヤバい。
「ッ……!」
鬼の形相で乃寧が近づいてきた。
「待って違う! 違うんだっ! 僕は希華さんが男子に絡まれて怖がっているのを見て……」
「分かってる。貴方がそんな事なことをしない人だって」
「え……」
意外な言葉が返ってきて唖然となる。
その間、乃寧は僕から希華を受け取ると、自分の背中に乗せて、おんぶする。
「希華が男子に絡まれているのを助けてくれたのよね。ありがとう」
「う、うん」
乃寧はそれ以上は何も言わず、希華を背負ったまま去っていった。
本当は保健室まで僕がおんぶしていくと言いたかったが……言わない方が良さそうなのでそのまま見送った。
それにしても、
『分かってる。貴方がそんな事なことをしない人だって』
僕がそんな事する人じゃないって……今でも信用されていて嬉しかった。
会話が弾まなかったのは残念だったけど……僕が遠ざけたせいだよね。
自分から姉妹の迷惑と遠ざけていたけど……それでも、寂しいものは寂しい。
「……どんまい」
「あ、ああ……」
振られたサッカー部の主将に肩を叩かれて励まされてしまった。君もどんまいだよ。
放課後は特に用事もなかったので、早く家に帰った。リビングのソファでダラダラと過ごしていると。
ピーンポーン
家のチャイムが鳴る。時刻は5時を回ったところ。
「宅配はなんもなかったような……。誰だろう? って……」
インターホンの画面に映っていた人物に驚く。乃寧だった。
僕の家をなんで知ってる……って、幼馴染だったから家は知ってるか。
それにしても何故、僕の家に? 仮に何か用事があっても昼間みたいに会話は続かないし……。
「うん……居留守を使おう」
インターホンから離れ、またソファで寛ごうと……。
ピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーン
チャイムの連打。画面の乃寧は真顔で押している。
『…………』
しばらく経って、乃寧は諦めたように画面から消えた。
「そ、そんなに大切な用事だったら出れば良かったかな……?」
(乃寧side)
「……出ないわね」
何度チャイムを押しても出てこない。留守なのだろうか。
私は玄関から家の後ろに移動する。メーターがある場所へ。
「ふーん……メーターが動いているから居留守ねぇ」
『お姉ちゃん、男子に囲まれてたところをね、スーくんが助けてくれたの! 凄く、カッコよかったんだよ。私のために、私だけを見て声を掛けてくれて、抱きしめてくれて……』
保健室で少し体調が戻った希華が、嬉しそうに話してくれた。
希華が無事で良かったし、助けてくれた涼夜には感謝してる。
けど……
……ズルい。
ズルい………ズルい。ズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルい……。
私だって、涼夜に助けられたい、抱きしめられたい。あわよくば、お礼としてこの身を捧げ、欲望のままにめちゃくちゃにして欲しい……。
「あっ、そうだわ。うふふ、うふふ……」
思わず笑いが漏れてしまう。
今日の私はとても冴えてるかもしれない。
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