第42話ザマぁ見ろ!
「……ママ?」
既に俺とは違って制服姿に身を包んだ紅葉がリビングにやってきた。
俺と同様、母さんが居ることにびっくりした様子だったが、
「……! ヤ、ヤッホー! 紅葉ちゃん! ……母さん帰って来たよー!」
さっきまで、俺に目も合わせられず、誰かに助け船を求めるかのように、視線をキョロキョロとさせていた母さん。
紅葉が着た瞬間、助かったと言わんばかりに、紅葉に飛びついた。
「え? えぇ!? ……どういう事? お兄?」
「知るか。……朝飯、作ってあるから今用意する」
「う、うん…」
状況がいまいち理解できていない紅葉は、俺に聞いて来るが、理由が理由なだけに一から説明するのもダルい。
丁度、炊飯器がご飯がもうすぐ出来ることを知らせるアラーム音もなった事だし……。
俺は、紅葉に避難した母さんを横目にご飯をよそっていたが、
「ママ、一回落ち着こう?」
「聞いてよー、ミックンがねー、頑張って仕事してきた私に冷たいの……シクシク」
そう言って、紅葉をハグしたまま離さない母さん。
つーか、冷たいっているか呆れてるだけだぞ。
そう思いつつ、食卓に皿を並べて、先に一人で朝飯を食べていると、紅葉も察したのか、
「いや、お兄は……てか、うわ、お酒臭いよママ。それに…あ、そう言う事。……ママァ?」
部屋全体を見渡し、全てを理解した紅葉が、クワッと目を見開いて母さんを睨んでいた。
「へ…へ、へへェ……。怖いよぉ。紅葉ちゃん…。ミッ君より怖い……スマイル、スマイル。ね?」
まるで蛇に睨まれた蛙のように、自分の娘に戦々恐々としながらも、何とかやり過ごそうと引き攣った笑顔を見せる母さん。
だが、そんなものは紅葉には通用しない。
無言のまま、抱き着く母さんを引き剥がし、そのままスタスタと俺の向かい側の席に座った。
そして、「……いただきます」と手を合わせ、黙々と食事をするかと思えば、俺の方を見て、ニヤッと含みがある笑いをして、罰が悪そうな母さんに耳打ちする様に、
「……ママもだけど、お兄もホンッとーに行き当たりばったりだよね。今日9時だっけ? デートして帰ってくるの遅いよね?」
「な、おい!」
まさかの不意打ち。
心の準備が出来ていなかったとは言え、母さんの前で言うとは思ってなかった俺は、慌てて、紅葉の口を封じようとしたが、
――時、すでに遅し。
さっきまでシュンとしていた母さんが息を吹き返したように、目をランランと輝かせ、
「え? 何? 何かミッ君、今日あるの!? 母さんに教えて、教えて!」
「……あークッソ」
あっかんべーしてザマァ見ろと、挑発する紅葉。
め、めんどくせー……。
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