ビターエンド 元気しているかな?

 その後避難所を転々としたが、会津のほうで震災前の小学校が再開した。

 もとの環境とは程遠いが、もとのメンバーと学校生活が送れるというのはうれしかった。

 大輔くんや玲菜ちゃんたちと無事に再会できた。

 しかし、そこに千尋ちゃんはいなかった。


 千尋ちゃんは一家で関東のほうに避難したらしい。

 ひとまず、安心した。

 避難先にはいつまでいるのかな?

 いつか戻ってきてくれるかな?

 はやく戻ってきて、もう一度会いたいな。

 そう思っていた。









 あれから11年。

 結局千尋ちゃんが福島に帰ってくることはなかった。

 成人式にも来なかった。

 関東で新しい友だちと、楽しく幸せな生活を送っているのだろう。



 おそらく一生会うことはない。

 バレンタインデーになるたびに彼女のことを思い出すが、年を重ねるごとに、だんだんと記憶が薄れてきているし、もう「かつてそんなことがあったなぁ」と良い思い出にとどまっているし、だんだんと彼女のことを忘れるようになってきた。

 彼女は元気にしているだろうか、きっと多くの友だちに囲まれて、楽しい人生を送っているのだろう。

 僕も4月からは社会人となる。

 新しい生活が始まるのだ。

 僕も、新しい人生へ。歩みを進めよう。


 自分の幸せをつかむために。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る