バッドエンドC  どこにいるの?

 その後避難所を転々としたが、会津のほうで震災前の小学校が再開した。

 もとの環境とは程遠いが、もとのメンバーと学校生活が送れて、大輔くんや玲菜ちゃんたちと無事に再会できる、というのは、今まで良い出来事が無かったため、とてもうれしかった。




 しかし、そこに千尋ちゃんはいなかった。





 どこに行ったのだろうと思っていたが、逆に先生から質問された。

「中村千尋ちゃん、どこにいるか知ってる?」

 えっ、と思った。

 僕はあの日以来、一回も千尋ちゃんに会っていないのだ。

 もちろん、知る由もない。

 どうしてそんなことを、先生はわざわざ僕に聞いたのだろうか。

 とりあえず素直に知らないと答えると、先生は

「そっか…」

 と一言だけ、やっと聞こえるくらい小さな声でつぶやくと、僕に顔を合わせることなく、職員室のほうへ行ってしまった。


 僕が学校を出た直後、千尋ちゃんはお母さんが迎えにきたらしい。そして、避難したはずだった。

 でも、どの避難所にも「中村千尋」という名前の避難者は確認されておらず、どこにいるか全く分からないらしい。

 そして、お母さんの名前も無いらしい。そう聞いた。







 となると、可能性は一つ。







 津波にのまれて、行方不明になった。

 これしか考えられない。


 はやく見つかってくれ。

 できれば生きていてほしい。

 元気な顔で、僕らのもとへ戻ってきてほしい。


 本当は自分も一緒になって、探したかった。

 でも、故郷は避難区域。立ち入りは制限されていた。


 だから、早く見つかってほしい。そう願うことしかできなかった。
















 11年が経った。

 まだ千尋ちゃんは見つかっていない。

 見つかってほしいと思うが、もう11年も経ってしまった。もう見つかることなんて無いだろうと、諦めの気持ちが多くを占めるようになった。


 ひょっとしたらどこかで生きているのかも?

 そう思うこともある。

 しかし、そう思うたび、こんなに時間が経ってしまったから、津波にさらわれたら生きているわけがないと自分で自分を説得してしまい、悲しい気持ちになる。



 東日本大震災から11人経っても、2,500人を超える方が行方不明となっている。

 1日でも早く、千尋ちゃんが見つかりますように。

 他の行方不明になっている方々も、早く見つかりますように。

 今年も14時46分に、そう祈って黙祷をする。

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