第12話 ▲から始める異世界生活
回復魔法を1ポイントずつ上げながら、盲目が解消するまで試し試しやってみようか。
それが無難で確実な方法だろう、が。
「……あ」
待てよ。
考え方を少し変えてみよう。
もしかすると、盲目を解消できるのは回復魔法じゃないのかもしれない。ヒールじゃなくてリカバーみたいな。キュアとかディスペル的な。
うーん。
その線が濃いな。
よし。
違う系統の回復魔法を手に入れよう。とすると、どんな感じのイメージを持てばいいんだ。
身体の回復というよりは状態の回復、か。
状態の回復ってなんだ。口から入ってきた食べ物の栄養素を吸収して回復……うーん。
元に戻る。元気になる。こんなイメージか。
「モリモリ食べて身体に吸収吸収!からだげんきっ!!」
………………
うん。吸収して元に戻る?いや、遠ざかった気がする。
まずい。混乱してきた。
状態ってなんだ。どういう意味だ。辞典が欲しい。
駄目だ。分からん。
「吸い取る……すいとる?」
この邪悪な状態異常を。
ピコン。
「え」
あれ。
うん。
「……………」
嫌な予感。
恐る恐る、ステータスウインドを開く。
【パーソナル】
名前:池田貴志
職業:リーマン
種族:人間族
年齢:26歳
性別:男
性格:保守
【ステータス】
レベル:1
HP:30/30
MP:50/50
攻撃力:22
防御力:3
回避力:2
魔法力:4
抵抗力:4
器用:3
運:7
初期ステータスポイント:996
【スキル】
ステータス:4
回復魔法:10
MP吸収:54
スキルポイント:32
「ちょ」
ま。
「え」
うそでしょ。
なんでなんでなんでなんで。え、なにこれ。どうなってるの。
MP吸収って。
どこからどうなれば、そんなスキルになるの。
しかも54て。
絶対おかしい。なんてことだ。これが本当の神の悪戯ってか。いやいや、そんな意味不明なことを言っている場合じゃない。というか神関係ないし。完全に俺のミスだし。
はぁー。心臓がバクバクいってる。落ち着け。まだだ。確かに致命的な過ちを犯したことは認めよう。だがまだ、まだ挽回できる。
僕たちは生きている限りやり直す機会は与えられているんだ。
「おーけー……想定内」
自分に暗示をかけてストレスを軽減する。大丈夫。いけるいける。
とはいえどうする。別ルートは諦めて回復魔法をアップさせてみようか。しかし今回と同様に、"うっかり"ポイントを消費しすぎる可能性がある。つまり残り32ポイントが全て回復魔法に費やされるパターンだ。これは回避したい。純粋なヒーラーでは生き残れない。
「ならば……」
先に攻撃魔法をとっておこう。その方が何かと安心だ。
攻撃魔法と言えば火魔法。セレスが使ってたファイヤーボールが良い例だ。
しかし火には良い思い出が無い。彼女には秘密だがファイヤーボールを初めて拝見した際はトラウマで吐きそうになった。ゲロゲロボール。
ゆえに火魔法は却下。むしろ敵が火系の魔法を使用した際、完全に打ち勝てる魔法を会得したい所だ。
すぐに思いつくのは、水。水魔法。火魔法には勝てると思う。
だが、攻撃魔法としてはどうなのだろう。少しパンチが弱い気がする。
昨日に水魔法使いのセレス様にも聞いてみたが、攻撃手段としてはあまり使用しないそうだ。補助的な用途が多々らしい。
彼女が言うのだから間違いない。それに現状は他の人の話なんて聞けない。だから水魔法は却下。
ということで散々悩んだ結果、1つの答えにたどり着いた。
「氷魔法」
火魔法に圧勝且殺傷能力も期待できる。必要十分条件を満たしていれば何も言うことはない。
いくぜ氷魔法。やるぜ氷魔法。
もう火だるまになるのは嫌だ氷魔法。
一面の銀世界を見せてくれ氷魔法。
真夏に食べるアイスは美味しい氷魔法。
俺に生きる力をくれ氷魔法。
氷魔法。
ピコン。
【パーソナル】
名前:池田貴志
職業:リーマン
種族:人間族
年齢:26歳
性別:男
性格:右
【ステータス】
レベル:1
HP:30/30
MP:50/50
攻撃力:22
防御力:3
回避力:2
魔法力:4
抵抗力:4
器用:3
運:7
初期ステータスポイント:996
【スキル】
ステータス:4
回復魔法:10
MP吸収:54
氷魔法:32
スキルポイント:0
「………え」
ぜろ。
「ぽいんと………ぜろ?」
そんな。何度見ても表示は変わらない。リロードも無意味。
ゼロって。これが本当のゼロから始める異世界生活か。いやそんなはずもない。最初100ポイントあったし。自分からゼロにしたし。
これでは、これでは盲目を治療できないではないか。なぜ、この、なんで。
何とも言い表せない感情が胸中を渦巻く。
「ぐぅう……」
見えない。何もかも。これが本当のお先真っ暗か。今度は間違っていないだろう。今度こそは。
「あー」
もうどうしよう。なんでこうも上手くいかない。最初の方は上手にポイントを振れていただろうに。やはり極度の緊張がイカれポイント分配を引き起こしたのだろうか。ままならない。人生は困難で苦しい。
「もう、さ」
盲目治療の道は1つしか残されていない。しかしそれを選択することによって失敗した場合のリスクが大きすぎる。ステータスは平均的に上げていきたい勢の池田にとってもストレスでしかない。
だがやるしかない。賭けるしかない。
残るステータスポイントを全て魔法力に捧ぐ。
お願いだ。頼む。魔法力上昇によって回復魔法の効力も上がってくれ。そして盲目から解放してくれ。
頼む。頼む。こい。
こい。
ピコン。
【パーソナル】
名前:池田貴志
職業:リーマン
種族:人間族
年齢:26歳
性別:男
性格:あほ
【ステータス】
レベル:1
HP:30/30
MP:4070/4070
攻撃力:22
防御力:3
回避力:2
魔法力:5944
抵抗力:4
器用:3
運:7
【スキル】
ステータス:4
回復魔法:10
MP吸収:54
氷魔法:32
スキルポイント:0
「……………」
結局治りませんでした。
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