第10話 Oh my goodness
「……………はぁ」
何を期待しているんだ。そんな親切心があれば最初に教えてくれたろうに。
頬をパチンと叩く。切り替えろ。幸いなことに今の俺にはセレス様がいる。彼女の存在が俺の理性を保たせていると言っても過言じゃない。
よし、頑張ろう。
「いや、うーん……でもやっぱり、なにかしら世界異動特典のようなものがあっても………いい気はする」
こちとら訳も分からず本世界に転移させられたのだ。剣と魔法の世界へと。だのに生身で生き抜けとは畜生が過ぎる。ココに至っては球技ばかりに勤しんでいた過去の自分を恨む。もっと実践的な部活やサークルに入ればよかった。空手とか剣道とか。
本当に特典は存在しないのか。現地人より力が強かったり、最初から魔法使えたり、学習速度が尋常じゃないとか。
俺が読んできた小説は全てウソつきだ。フィクションに文句を言っても仕方がないのは分かっているけれども。まさか自分が作り話の世界に迷い込むとは夢にも思うまい。
「神様……」
お願いする。
我に力を授けたもう。
「……………………」
………………
「……………くぅ」
当然出てこない。
何故だ。なんなんだ。もう訳が分からない。
とりあえず、何か。何でもいいから欲しい。
ステータスウインドウだけでもいいから。
今の俺の状態を教えてくれ。
ステータス。
ステーーーーーーータス!
ステータスステータスステータスステータスステータスステータスステータスステータスステータスステータスステータスステータスステータスステータスステータスステータスステータスステータスステータスステータスステータスステータスステータスステータスステータスステータスステ
ピコン。
【パーソナル】
名前:池田貴志
職業:リーマン
種族:人間族
【ステータス】
レベル:1
HP:10/10
MP:50/50
攻撃力:2
防御力:3
回避力:2
魔法力:4
抵抗力:4
器用:3
運:7
初期ステータスポイント:1000
【スキル】
ステータス:1
スキルポイント:99
「…………………き」
きたぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁ!!!!
うおぉぉぉぉぉおおおおおおおお!!!!!
いえぁぁぁぁぁああああああああ!!
ぬぉあぁっぁぁおおおおあぁっぁぁああ!!!!!!
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおお!!!」
これで勝つる。何に勝つか分からないけど。
よかった。神様信じててよかった。
信心深い仏教徒でよかった。御盆のお墓参りかかさず行っててよかった。
「何でもこいやぁぁぁぁぁああああああ!!!」
今のテンションなら無敵だ。誰が相手でも勝てる。
「おらぁぁぁぁああ!!!」
「……………………………」
視線を感じた。
「……………」
「……………」
「……………」
「……………どうしたの」
「あ、いえ、その……何でもないです」
「……………」
「……………」
「…………………」
視線とともに気配も消える。
他人の視線と気配って意外とわかるもんだな。盲目になったことが影響しているのだろうか。
いや、そうではなく。
シャウトが裏庭まで聞こえたのだろう。かなり恥ずかしい。小学校の学芸会で10回連続噛んだ時くらい恥ずかしい。
「ふぅ………」
落ち着こう。
よし、落ち着いた。
もう1度ステータスウィンドウ確認。
【パーソナル】
名前:池田貴志
職業:リーマン
種族:人間族
【ステータス】
レベル:1
HP:10/10
MP:50/50
攻撃力:2
防御力:3
回避力:2
魔法力:4
抵抗力:4
器用:3
運:7
初期ステータスポイント:1000
【スキル】
ステータス:1
スキルポイント:99
「………」
ブォンと。薄透明色のウィンドウが現れる。盲目のはずなのにだ。恐らくは目で見ているわけでなく頭が知覚しているということか。よく分からんがそういうことだろう。
きてる。俺の時代がいらっしゃってる。マジで最&高。これぞふぁんたじーの醍醐味だ。ありがとう。ありがとう。
しかも「攻撃力」や「防御力」などステータス表記が日本語になっているのも嬉しい。RPGゲームは少なくない数こなしてきたが、未だにVITやAGIの意味か分からない。とりあえずSTR上げる精神。
「…………」
それにしても。
驚くほどステータスが低い。平均が分からないので確かなことは言えないが、恐らくは激低だろう。
そしてスキル。
スキル:ステータスに1ポイントが付与されている。凡そ見当のつくところでは、強い願いが形に変わると言ったところか。どこぞの啓発本かと思ってしまう手法だが、複雑な手続きが不要なぶんやり易い。
ステータス、スキルいずれも初期ポイントが用意されている。かなりの親切設計だ。恐らくはこれを割り振って当座の危機を乗り越えろと。
にゃるほど。にゃるほど。
悩ましいな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます