「大臣・メロン・砦」

 私が今の内閣に置いて大臣という地位につけたのは、全ては努力と誠実さを押し出してきた結果だといえるであろう。

 だが、それだけで生き残れるほど政界は甘くはない。

 努力・誠実さで売り出していけるための「根回し」が最もこの世界では重要と言えるであろう。この根回し力で私はここまでこれたと言い直そう。


 その人が好きなものを送るという能力、こと情報収集に関してはこの政界の中で私の右に出るものはいないだろう。

 勿論ルールを破らない範囲での行いだが、ルールに縛られることは無い。だからこそ私はここにいるのだ。

 そして、今回の新総理指名よる内閣選任でも、また、大臣の位へと戻るために手を尽くすのだ。


 新総理へと事実上内定しているお方の邸宅まで足を運んだ。

 その地位にふさわしいほど堂々としつつも平静たる門構え。さらにはその懐の大きさにさえ似た庭園の広さ。

 その人の持ち物から性格や特徴がわかるように、この様な豪邸に住まわれている人は間違いなく、筋や堅実さを強く大事にされている方だとわかる。


 だからこそ、私のこの手土産も効果的に効くはずだ。

 農林水産大臣として、今回の新総理指名の話が出てから進めていた「メロン計画」。

 堅物の傑物とも囁かれる新総理に関してのプライベートに関する話はなく、私の情報収集力を使っても唯一得られたのが、好物がメロンという事だけ。それを元に最高の贈り物として、より甘くジューシーなメロンを生み出すべく品種改良に着手したのだ。


 逆に言うと、これ以上の手はない。


 最後の砦ともとれるこのメロンを手に、ネクタイを締め直し門をくぐった。

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