「トイレ・全力疾走・花びら」

 例えば電車の中、会議中だったりと急にやってくる生理現象に皆さんはどう立ち向かうだろうか。緊張感のない身内の集まりであったり、短時間短距離での放出先があれば問題ないだろう。

 かく言う私は内気な性格が災いして、ただ目立ちたくないという理由だけで、学校の授業中にさえ席を立つことができなかった。


 授業終了まで10分ほど。時間だけ見ればまあ我慢できなくもないかも、といった気はするが、問題なのは昼食前ということと席が廊下側の真逆の窓側中央部に位置している。授業終了チャイムと共に駆け出していくやんちゃ男子を始め、購買や食堂へと向かう人が廊下になだれ込む流れを逆らってお花畑へとたどり着かいないといけない。


 この問題をどうクリアするのかといった感じだけれども、我慢による冷静さと集中力を無くした私には、結局チャイムが鳴り終わるまでは作戦なんてものは考えられなかった。

 ただ、火事場のなんとやら?背水の陣?よくわからないけどギリギリで湧き上がる謎の力で僅かに持ち直した気がして、スタートダッシュは上手く切れた。特に考えずという考えられず、というかこんな状況で冷静に考えられる人なんているのかって脳内セルフ突っ込みを循環させながら最小限の振動で競歩する。目力を強め半身半身で素早く歩む姿は鬼神の様相だったのだろう、すれ違う同級生たちの顔が引きつり気味だったことは胸がチクリと痛んだ。


 そして、もちろん忘れていたってわけじゃなくて考えてたことが抜けてただけなんだけども!この生徒の行進に対しての逆走に立ち向かう。

 信仰なんて持っていないのにこんなときには即席の神に助けを乞う。「おお、神よこのまま何も起こらず私を助けてください。」と。

 濁流を抜けそして私は走る。4クラス分つながる廊下を、それはもうなんかすごい速さで駆け抜けた。

 生涯一番の速さを出してると思う、尊厳を守るためにただそれだけの為に私は進化し、そしてこの突き当りの角を曲がればたどり着くのだ!と駆け込むことに成功した。


 個室に入った安心感、間に合ったという錯覚の安心により、「よくここまでがんばった!もういいぞ!」と3秒早くにイマジナリーマイセルフからのお許しが出てしまったために今生の大失禁の乱ですよ。

 純情乙女の可憐な花びらが舞い散ったそんな瞬間でした。

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