「密林・金・足」
昨今はやれ人種差別だの個性の尊重なんだと人権問題に敏感ではあるが、本質は世界に潜む巨悪のプロパガンダに過ぎなかったのだ。その実、灯台下暗しという言葉があるように、平等や平和を謳い、世間に強い光を照らしている人の下では、人身売買や奴隷、現代でも商品として扱われる人間の存在を巧妙に隠していた。
その企みのしっぽの先を掴んだと思っていたのだが、相手にしていた組織は想像以上に大きく、手にしていたものはトカゲの尻尾であった。
そんなヘマをした私は当然ながら組織の人間に捕らえられ気を失った。
目が覚めた時には、この亜熱帯の密林にいた。逃げ出せないようにご丁寧に右足を切り落とされ、更に足元には日常的に毒をもつ生物が徘徊し、欠損した体をもってしては脱出など不可能であった。それでも片足で不自由ながらも奴隷のように、というより奴隷そのものとして働かされている。
ペラペラの布切れを着ているだけなのに昼夜を問わず止まらない汗を流す。それほどまでにここに建設された大麻プラントにあった気候であることがわかる。
私を含めた30名程の奴隷と数人の監視人で月に約1200ポンド程の大麻を出荷している。絶対悪の存在を知らない頃には憎むべき物なはずだったのに、こうも尊厳を奪われると堕落していき悪の住人になり果てた。
今では毎夜のように自由な夜空の下でくすねた葉っぱを吸って笑うのだった。
こうなる過程でいっその事と死ねずにいたみじめで弱い私も、このプラントが焼き払われたりでもしたのならば迷いなくサヨナラできるであろう。そんなことを思い返しながら今日も汗を流すのだ。
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